ブームが去れば、作ればいい。順番こに人気者になればいい
ーー『ひょうきん族』『やまだかつてないテレビ』……人気絶頂の時、不安に襲われることはなかったですか?
山田 ブームだから。ブームがきたらワーッと人気だけど、ブームはいつか去る。ブームが去れば、また作ればいい。またやればいいんですよ。だからそういう繰り返しで、それで順番こに人気者になる。誰かが去れば誰かがその間出られる。
ーー順番こ、いい言葉ですね。
山田 ブランドだって、グッチなんか今もうまた盛り返しましたけど、どうにもなんなかったような時もありましたよ。シャネルも。いや、ちょっと例えが強烈に高級すぎたかもしれない(笑)。じゃあタピオカにしよう。最初のブームが終わってガーンと落ちて、誰も見向きもしなかったのに、また来たじゃないですか。
ーーたしかに。そして今また落ちたけど、何年か後にくるかもしれない。
山田 そうなんですよ。ブームですよ。
ーー独占しようとするから不安になるんでしょうか。
山田 でもそうね、みんな悩むでしょうね。周りにライバルたちがいればいるほど。
何をやりたいかという前に、まず「仕事」
ーーたけしさんは映画を撮られたり、鶴太郎さんはヨガとか、芸人さんそれぞれの「上がり」みたいなものがあるとするなら、女性芸人の上がりってどこにあるんでしょうか。上沼恵美子さんでもあんなにあっさり番組は終わったりする。
山田 ゴールはたけしさんだってないでしょうから。私は……まぁ面白いことを続けたいですね、ずっとね(笑)。商売だから、これ職業だから。何をやりたいかというのの前にまず「仕事」なんですよ。
ーーそうか……その「仕事」を、自分の「人生」や「生き方」とごっちゃにすると、悩みはさらに深くなってしまう。
山田 生き方はね、釣りが好きだし、字を書いたり、友達とヘラヘラ旅行するのも好きだし、温泉も好きだし、生き方は自由人。やっぱりお笑いや番組作りは職業なので。それは時には熱が出るほど考えたりする。
だからみんなと一緒ですよ。「このお饅頭どうやったら売れるかな」って考えていた人が、お家に帰れば野球を応援して、お風呂に入って冷たいビールでも飲んで(笑)。
ーーなるほど。ちょっとわかってきた気がします。ずっとそれはもう「仕事」なんですね。
山田 でもこれが普通の職業と違うのは、具合が悪くて病院に行っても「あ、邦ちゃんだ。何しにきたの」って言われちゃうとこですよね。ケガして血とか出てるのに、「いつも元気だね」とか(笑)。
ーー元気じゃないから来てるのに。
山田 それで笑えるじゃないですか。それでいいなっていう、そういうちょっと変わった“職業”ですね。
写真=鈴木七絵/文藝春秋