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 10月15日朝から三個班に分かれ沢筋と山中の捜索に入る。残る2人も生きていることを信じ、広範囲な捜索となる。林道は小川谷の左岸についており、上部で右から犬麦谷が注ぎ込む。犬麦谷は沢登りに人気のある沢なのだが、林道が最上部の終点近くで再度犬麦谷を横切る。そのため犬麦谷下部の渓相は荒れ、沢登りの登山者も林道上部から入渓する人が多くなった。その犬麦谷下部を捜索していた班が、夕方になって汚れたズボンを1本見つけた。近くを丁寧に捜したが他には見つからなかった。また対岸の山中に入った班は、ウエストバッグと運動靴を発見し下山してきた。これらを総合すると、やはりキャンプ地から下の犬麦谷を中心とする斜面にいる可能性が高い。あしたはそのあたりに焦点を絞り捜索を実施することにした。

残る2人も発見、1人は死亡

 10月16日、午前中に別件の救助活動があり少人数しか出せなかったが、午後から本格的な捜索となった。絞り込んだ犬麦谷下部を三個班に分かれ、150mほど間隔を開けて林道下の急斜面をしらみつぶしに捜していった。

5人の発見場所  提供:東京新聞

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 午後3時10分ころ、犬麦谷に注ぐ浅いルンゼ下でうつ伏せに倒れ、すでに死亡している男性を三班が発見した。さらに、発見の報を無線で傍受し三班方向に向かっていた一班が、下の犬麦谷方向から「助けてくれー」という声を聞いた。急いで沢まで下りたところ、頭部から血を流し擦過傷だらけの男性が助けを求めていた。名前を問うと「Kです」と答えた。K君(23歳)は衰弱しているものの意識ははっきりしており会話もできたので、12日以後のことを尋ねたが、他の者と同様に意識がなくなり、幻覚を見ていたという。この犬麦谷沿いは何度も通過して捜したはずなのに、どうして発見できなかったのだろう。意識も朦朧として方々を歩き回っていたのだろうか。そうするとこの50メートルほど上流で亡くなっている男性はN君(32歳)ということとなる。死亡したN君も沢の近くまで滑落しており、ズボン、靴はなく、長袖シャツにトランクス、靴下だけだった。体中に擦過傷が見てとれた。