11月1日に行われる天皇賞・秋(東京競馬場芝2000m)からアーモンドアイ(牝5歳)が始動する。オーナーのシルクレーシングの規定では牝馬が現役をつづけられるのは6歳の3月までだそうだから、彼女にとって最後の秋シーズンとなる。
天皇賞は昨年につづく連覇の期待がかかる。勝てばGⅠは8勝目だ。芝のGⅠに7勝した馬はシンボリルドルフが最初で、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、ジェンティルドンナ、キタサンブラック、アーモンドアイとつづいた。GⅠの数も増えて、牝馬限定のGⅠもあるから単純に勝ち数だけで比較してはいけないのだろうが、芝GⅠ8勝は史上初の快挙となる。
なぜどんなスーパーホースもGⅠ7勝の壁を超えられないのか
その一方で、これだけの名馬たちが7勝に並びながら、どうして抜けないのかという思いもある。今年の春、アーモンドアイはヴィクトリアマイルを勝ってGⅠ7勝目をあげたが、安田記念でグランアレグリアに敗れ、私たちファンもGⅠ8勝の難しさを改めて思い知らされた。なかにはこんな言い方をする人もいたほどだ。
ルドルフの呪い——。
アメリカ大リーグの「バンビーノの呪い」(ボストン・レッドソックスはベーブ・ルースをニューヨーク・ヤンキースに放出して以降、優勝できなくなった。「バンビーノ」はルースの愛称。2004年に解かれた)ではないが、こういう話は嫌いではない。
シンボリルドルフが7つ目のGⅠを勝ったのは1985年、シンザン産駒のミホシンザンを4馬身突き放した有馬記念である。翌年の春、アメリカ遠征に出て、初戦のサンルイレイステークス(GⅠ、6着)で故障、引退となる。通算成績は16戦13勝、2着1回。問題は2着に敗れた天皇賞・秋だった。
あの天皇賞は、宝塚記念を肩の筋肉痛で取り消して以来のレースになったが、いつものように千葉のシンボリ牧場で調整されたシンボリルドルフには休み明けの不安など微塵も感じられなかった。3200m時代の秋の天皇賞はシンザンが勝ってから18年間1番人気が勝てなかったが、2000mになった84年にミスターシービーがジンクスを破ったばかりで、負けるシーンなど想像すらできなかった。