プロ野球、Jリーグ、大相撲などが新型コロナウイルスの感染拡大を受けて次々と延期、もしくは中止となっている今、無観客ながら例年通りのスケジュールで開催されている数少ないスポーツイベントの代表例が、競馬だ。

 とりわけ中央競馬は現在、桜花賞を皮切りとした春のクラシックシーズンの真っ只中にあり、存在感の薄れた他競技に代わってスポーツ紙の1面を飾る機会も増えている。

 ではなぜJRA(日本中央競馬会)は、この状況下で競馬開催を続けている(もしくは、続けることができている)のだろうか。

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「JRAとしては、クラシックシーズンの競馬は何とか滞りなく開催したいという意向があります。というのも、クラシックレースは競走馬生産の根幹を担っているから。クラシック競走を勝った馬が生産に戻る、という循環の元に競馬は成り立っているので、なくなってしまうと後々、日本の競馬産業全体に大きな影響が出てしまう。ですから、可能であるのなら例年通りに日程を消化したいわけです。幸い現時点では、人さえ管理すれば開催できる状況なので、そこをよりどころに競馬を続けているのだと思います」(ターフライター、海外競馬評論家の奥野庸介氏)

4月12日に無観客で開催された今年の桜花賞 

日本政府からの“無言の後押し”

 とはいえ、人と人が接触し合う種目は別として、たとえ無観客でも競技を行いたいのはどのスポーツも同じ。だが入場料収入がなければ赤字を垂れ流すだけだし、そもそもこの御時勢で強行開催しようとすれば、公式、非公式問わず、しかるべき筋からの指示によって頓挫してしまうのは目に見えている。

 ところが競馬には、日本政府の“暗黙の了解”、もしくは“無言の後押し”がある。

「中央競馬は現在、年間で3兆円に届こうかという売り上げがあります。これは世界最大の数字で、うち10%は国庫納付金として納められる。その税収を失うのは、国としても大きな痛手なんです」(同前)

 JRAからの国庫納付金は、日本中央競馬会法によって畜産の振興や社会福祉に充当されることになっている。だとすれば馬券の売り上げがひいては、新型コロナウイルス感染防止策のために使われる可能性も考えられる。

 4月12日に行われた桜花賞は、140億4762万3500円の売り上げを記録した。無観客開催で、場内、場外の馬券売り場も閉鎖されていた中、前年比83.4%とわずかな減少にとどまったのだ。これには日本競馬独特のシステムが寄与している。