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「私の父は何者?」河瀨直美監督が、養女として悩んだ10代を乗り越えて『朝が来る』を撮ったワケ

「私は、事実を知りたかった」

 河瀨直美監督がメガホンをとった最新作『朝が来る』が10月23日から劇場公開された。

 原作は、ベストセラー作家・辻村深月による同名の小説。特別養子縁組を題材に、14歳の幼さゆえに子どもを手放さざるを得なかった少女ひかりと、長い不妊治療の末に自分たちの子を授かることができず、特別養子縁組をして子どもを迎える佐都子という二人の女性と、その家族のドラマを描いたヒューマンミステリーだ。

 なぜ、河瀨直美監督は小説『朝が来る』に惚れ込み、映画を作ろうと思ったのか。そこには、河瀨監督自身が養女であり、「自殺も考えた」と語る壮絶な経験がある――。

河瀨直美監督(Photographed by LESLIE KEE)

 映画『朝が来る』にナレーションで参加した「news zero」キャスターの有働由美子さんが、河瀨直美監督に作品に込めた思いを聞いた(全文は「文藝春秋」11月号及び「文藝春秋digital」に公開中)。

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有働 河瀨さんの最新作『朝が来る』は、コロナ禍で4カ月ほど公開延期されていましたが、10月23日からようやく公開されましたね。

 私も一人の女性として、登場人物と自分を重ねて観たので、たぶん他の人とは違うところで涙が出て。すごく印象的な映画でした。劇中、特別養子縁組の制度を紹介するアナウンサーとして声の出演をさせていただきましたが、今年4月には、特別養子縁組制度の対象年齢を拡大することなどを盛り込んだ法改正もありました。なぜ今この作品を映画にしたいと思ったのですか。

有働由美子さん(※写真は6月号対談時のものです)

河瀨 今年法改正があったのは偶然でした。基本的に養子縁組は家庭環境や親の事情でするため、子どもの視点は見落とされがちです。ところが、辻村さんの小説には、養子縁組をされる子どもの視点が明確にあった。私自身、自分が養子縁組をされた養女だから、親たちがどういう状況で養子縁組をしたかというのは、当事者の子どものまなざしで見ています。また、子どもと生き別れになる14歳のひかりの苦悩を、辻村さんは見事に描いていました。

戸籍についたバッテン

有働 河瀨さんは、生後間もなく生き別れた父親を探す『につつまれて』(1992年)、養母と暮らす日々を紡いだ『かたつもり』(94年)など、ご自身の境遇を作品にしていますが、改めてご家族のことをお伺いしていいですか。