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「感触よし」と報道されていたFA交渉

 そこから9年後の2009年。今度は「第二の縁」がやってくる。内川がFA権を獲得、それまでカープにとってのFAは「選手が出ていくだけの制度」で「獲得」に乗り出したことは一度も無かったのに、そのカープが内川の獲得に乗り出したのである。ついにカープがFA戦線に名乗りを上げた。これはカープファンにとっては大きなニュースで、私自身も本当に驚いた。

 これまで一度もFA宣言した選手を獲りにいったことの無いカープが動いた。それはカープが内川に捧げた二度目にして最大の熱意である。なお、当時の監督は野村謙二郎。野村監督と内川は同じ大分県出身で、交渉の場にも立ち、同郷という武器も使ってとにかく熱心に誘った。カープがFA宣言をした選手の獲得に初めて乗り出したこと、その熱意は内川の心にも強く響いたようで、交渉の場での笑顔も多く、実際に「感触よし」という形で報道されていた。ちなみに、カープの熱意はそれだけじゃない。野村監督が交渉の席で「入団してくれれば使用している選手の有無に関係なく好きな背番号を与える」という異例の条件も提示したのだ。緒方孝市が背負っている背番号9であろうと前田智徳が背負っている背番号1であろうと、君が望むなら喜んで渡す。金銭を除く誠意としてこれ以上のものは無いのではないだろうか。

 内川が獲れる! 9年待たされたけど、やはり「間違いない選手」だった内川がカープに入る。順調な交渉を報じるニュースを見ながら、私は内川を獲得した気になっていた。また、内川の奥さんは元フジテレビアナウンサーで、彼女がカープファンであることも報道されていた。旦那が自分の好きなチームの選手になるというのは嬉しいことに決まっている。カープの熱意に加え、奥さんがカープファンであるという現実。うん、今度こそ完璧だ。

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 しかし。ここでもカープは内川を逃してしまう。今回こそ完璧と思っていたのに、内川はソフトバンクに入団してしまったのだ。あくまで噂でしかないが、内川はほぼカープ入りを決意していた。しかし、最後の最後。幼少期から野球を教え続けてくれていたお父さんが「息子の試合を観戦しに行ける環境がいい」という話をしたらしい。お父さんが住んでいるのは大分。父の願いを考えると広島より福岡。つまりカープではなくソフトバンク。あくまで「そうらしい」という話ではあるが、自分はこれが決定打になったと思っている。イチから野球を教えてくれたお父さんへの恩返しなら仕方ない、と。

 そして今回。現時点でカープが獲得に乗り出そうとしているかは分からないが、個人的にはここが「第三の縁」だ。今シーズンの戦いを見る中で、新井と黒田が抜けた後の精神的支柱の不在。それは非常に大きかったように思う。そこに内川聖一。うってつけじゃないか。それこそ、カープの顔である鈴木誠也。彼は数年前まで自主トレで「内川塾」に入り、様々なことを教わっていた。そう。内川とは深い交流のある仲なのだ。チームに馴染む要素は十二分、である。

 この第三の縁は「三度目の正直」であるとも思っている。ドラフト、FA、2度も逃してしまったけど、今度こそ「赤ヘル内川」を誕生させ、カープで大暴れし、似たような経緯でカープに入団した琢朗さんや新井のように、赤いユニフォームを着て最後の花道を飾ってほしい。ようするに獲得に乗り出してほしい。カープの偉い人。頼みます!

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