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「Bリーグ」の契約交渉で起きた“ある事件” こんなことは野球界ではあり得ない

池田純「スポーツビジネス・ストロングスタイル」#6

2020/11/05
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 私が経営を担うB3・さいたまブロンコスでは、来年1月に開幕するシーズンに向けて、着々と準備をすすめています。

 先日、こんな出来事がありました。選手の獲得に際して、エージェントとのやり取りの中で起きました。“事件”といってもいいでしょう。

 驚いたのと同時に、こんなことが起きてしまうBリーグのエージェントに関する現状は一刻も早く変わってもらいたい、と強く思いました。

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 そこで今回は、あえて他の先進的なプロスポーツの慣習や制度と比べても未成熟なのではないか、と思う部分について、みなさんと共に考えたいと思います。

©iStock.com

面談前夜、ありえないことが起きた

 この夏から秋にかけて、さいたまブロンコスは、獲得するべき外国人選手の調査を行ってきました。私たちが求める選手像に合致した候補が幸いなことに見つかり、数週間かけて編成担当者とエージェント会社の代表との間で条件面を詰めていきました。そして先日、エージェントからの最終提案をブロンコスの副代表がエージェントとの電話交渉の中で合意しました。

 当然我々としては「契約合意にまでこぎ着けた」という認識でいました。

 あとは、今後のおつきあいのためにも、選手のエージェントでもあり、エージェント会社の代表でもあるその方と、チームの代表である私が直接面会し、シェイクハンドするだけ――。

 予想だにしないことが起きたのは、その面談が予定されていた日の前夜です。

 エージェントから副代表に連絡がはいり、「他チームからブロンコスの提示額を超える打診があった。選手に選ばせるのでオファーシートを出してほしい。オファーシートをもらっていないので正式合意ではない」というのです。

 条件交渉の途中の段階なら、そうした駆け引きをすることは理解できます。しかし、今回は年俸や付帯条件の度重なるやりとりを経て、副代表が合意フェーズで最終交渉に乗り出し、すでに双方が合意に達したフェーズ。一般的にも、口頭での契約が成立していると捉える段階での話です。野球の世界であれば、その段階で他球団から問い合わせがあったとしても「今は交渉中だから、それが終わってから再度連絡します」と仁義を守るでしょう。