重要な役割を担うはずの選手だったが……すぐに下した決断
そのタイミングで他チームからのオファーを持ちだし、条件の上積みを図ろうとする手法は、あまりに不誠実で非常識と言わざるを得ません。
チーム編成上、重要な役割を担うはずの選手でしたし、彼を獲得できないとなれば外国人選手なしでシーズンに臨むことになる可能性もある。
それでも、私はすぐに決断を下しました。
当該選手との契約をすっぱりと諦めると同時に、そのエージェントとは金輪際二度と関わらないことに意を決しました。
この一件を通して、私はあらためて、日本のバスケットボール界がまだまだ未成熟だということに気付かされました。
そもそも、エージェントまわりのこと、代理人制度がきわめて未整備なのです。
突然、ネットで「この選手、いかがですか?」
Bリーグには野球界やサッカー界にあるような、業界での信頼関係を前提としたビジネス慣習や、公認代理人の仕組みはありません。そのため、国内外の様々な会社や人物が、“エージェント”と称して活動しているという現状があります。
その結果、たとえばこんな不思議なことが起きています。
実は、多くのエージェントが、SNSなどを通じて各クラブの幹部に個別にアプローチを試みています。私のFacebookアカウントにも、エージェントと思しき人たちからの友達申請が次々とあり、リストに溜まっています。いまは承認することはありませんが、最初のころはつい承認してしまったことも。“友達”になった国内や海外のエージェントからは、ある日突然、メッセージが送りつけられてきます。「こんな選手がアメリカにいるが興味はないか」「年俸はいくらでどうだ」と、YouTubeに上がっているその選手のプレー動画を貼り付けて売り込んでくるのです。会ったことも、挨拶もまったくなく、まったく突然、ネットで「この選手、いかがですか?」と連絡がくるのです。
私は、こうした状況は早急に改善されるべきではないか、と思います。