星野源ら、若いアーティストも魅力を感じている音響ハウス
――帰り道で? なんと、驚きの速さですね。それは2019年の出来事でしょうか?
佐橋 2019年4月……打ち合わせ自体は2月だったかな。寒かったもんね。で、その日のうちにすぐ曲はできたから、飯尾さんと監督に送ったら、ワアッ!って盛り上がって。「これをどうやって録音しようか」という話から始まって。
それで今回映画に出演してこの曲でドラムを叩いていただいてる高橋幸宏さん……そのお兄さんで高橋信之さん、もともとはご自身もアーティストで曲をたくさん書かれているかたなんですけど。その高橋信之さんまわりの人が「HANAちゃんって面白い女の子がいる」って。まだ小学生だったけどYMOのトリビュートライブに出て、YMOの曲を弾き語りした女の子。“帰国子女”というより「ほぼ英語のほうが楽」という子なんだけど「その子面白いよ」と。そうしたら、実は飯尾さんがちょうど彼女のデモテープを録るお手伝いをしていたんですよ。飯尾さんから「この間撮ったデモテープの音があるんで佐橋くんちょっと聴いてみて」って言われて。それで聴いたら「あら、ぴったりじゃない!」ってことになり……。
それで「女の子が歌うなら、歌詞はどうしよう」。で、監督がこの映画でインタビューを予定していると言っていた大貫妙子さんに電話してみたら「なにそれ、面白そうじゃない」ということになった。
――すごい。みなさん、驚くほどフットワーク軽いんですね。
佐橋 みんな気が短いんで、さっさとやりたいタイプなんです。それで「じゃあ、あとはどういうメンバーでやろう?」と考えて、音響ハウスゆかりの先輩方をお呼びしました。井上鑑さん、高橋幸宏さん。あとはスタジオミュージシャンの連中がやっている「ソリッドブラス」というブラスバンドがあるんですけど、彼らにホーンセクションをやってもらって。出来上がったのが、このテーマ曲。
――13歳(当時)のHANAさんだけ、ぐっと歳が離れていますね。
佐橋 そう、ほとんど孫の世代ですよね。そういえば、映画には、意外と若い人が登場していないですね。ぼくも来年還暦ですし。
ぼくはギター弾く以外にもプロデュースの仕事もさせていただいていて、もともと「上の世代とも下の世代とも繋がっている人」という人選もあってぼくに声がかかったのかな、と思っています。例えば、最近音響ハウスでよくやっているのは、星野源さん。あの辺の世代も話が聞ければよかったか。あとnever young beachとか若いアーティストもここを使ってるかたは多いし。そもそもレコード会社にスタジオがありますけど、そこを使わずここでやりたいって来るわけだから、やっぱり魅力的なスタジオなんだなと思います。