坂本龍一、松任谷由実、矢野顕子、佐野元春など日本を代表するアーティストたちがこよなく愛したレコーディングスタジオ「音響ハウス」。この老舗レコーディングスタジオ45年の歳月とその魅力を、そうそうたるミュージシャンとスタッフが語り尽くすドキュメンタリー映画『音響ハウス Melody-Go-Round』が11月14日(土)より公開される。
映画公開に先立って、出演およびテーマ曲も作曲したミュージシャンでギタリストの佐橋佳幸さんに、音響ハウスの会議室にてお話をうかがった。音楽業界の点と点をつないで線にする存在の佐橋さん。前編の最後では、佐橋さんが仕切る録音スタジオの“イベント性ある明るさ”について語っていただいた。そして再び映画『音響ハウス Melody-Go-Round』テーマ曲のお話へ。
(全2回の2回目/前編を読む)
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坂本龍一さん、坂本美雨さん、矢野顕子さんとの古い仲
――映画に登場する、佐橋さんの“明るくてイベント性のある現場”。このレコーディングで、当時13歳と特別に若いHANAさんもリラックスできたんでしょうか?
佐橋 HANAちゃんはずっと緊張していて。まず言ってることがわからなかったと思うんですよ。専門的な音楽用語はもちろんのこと、ぼくの名前も覚えられなかったかもしれない。多分、外国で育った人には「佐橋」は難しい名前だとも思います。だから人の名前を覚えるのも必死だったと思いますよ。
――じゃあHANAさんは、バイリンガルというよりは……。
佐橋 ほぼ英語のほうでしょう。お母さんとはロビーで英語で話してた。ぼくが無理して英語で頑張っても良かったんだけど。
――ちなみに、佐橋さんのCD『佐橋佳幸の仕事(1983-2015)~Time Passes On~』に、坂本龍一さん(坂本龍一featuring.Sister M)の「The Other Side of Love 」が収録されていましたが……。
佐橋 あれを録ったのは、ここじゃなく、今はなくなってしまったスタジオ。亡くなってしまったスカパラのドラムの青木くんとぼく以外は、全部教授(坂本さん)が1人で演奏してるのかな。
――当時高校生だったSister Mこと坂本美雨さんも、このレコーディングは緊張されてましたか?
佐橋 その日、ぼくは美雨さんに会わなかったんです。ギターの演奏は別の日に録っているから。だけど仮歌はもう、美雨さんの歌だったな。その声を聞きながら演奏しました。
ぼくは、美雨さんを子どものときから知っていて、90年代の頭に仕事でニューヨークに行ったとき、ぼくはもう矢野さんとは仕事をしていて……教授とはまだ仕事をしていなかったのかな? 家に遊びに行ったんですよ。そのときまだ美雨さんは中学校に入ったばかりで、部屋で勉強をしてたな。
そういえば、今年コロナの騒動になる直前にFMラジオの美雨さんの番組に出たときも、昔話に花が咲きました。