坂本龍一、松任谷由実、矢野顕子、佐野元春など日本を代表するアーティストたちがこよなく愛したレコーディングスタジオ「音響ハウス」。この老舗レコーディングスタジオ45年の歳月とその魅力を、そうそうたるミュージシャンとスタッフが語り尽くすドキュメンタリー映画『音響ハウス Melody-Go-Round』が11月14日(土)より公開される。

 映画公開に先立って、出演およびテーマ曲も作曲したミュージシャンでギタリストの佐橋佳幸さんに、音響ハウスの会議室にてお話をうかがった。音楽業界の点と点をつないで線にする存在の佐橋さん。まずは、映画のテーマ曲「Melody-Go-Round」について。(全2回の1回目/後編を読む)

佐橋佳幸さん

打ち合わせの帰り道には、もうメロディが浮かんできた

――作品を拝見しまして、主題歌が印象的でした。佐橋さんの作品に関わるきっかけと、あのレコーディング風景について教えてください。

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佐橋 はじめは、レコーディングエンジニアの飯尾さんから「実はこういう映画を作る話があるんだけど、音楽監督みたいなことをやってくれないか」という話があって。それでまずは相原裕美監督とざっくばらんな話をしたんです。

 相原監督の1作目の映画(『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』)はもう、ぼくら音楽オタクの間では“世界的に話題”というニュースも伝わっていたんで「その監督なんだ」と思って話をしていたら、もともと相原監督はレコード会社のディレクターだった人なので、共通の知り合いも多くて。直接一緒には仕事をしてないけれど、近しいところで仕事をしていた時期もあったみたいで、いろいろな四方山話から始まって。

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』のポスター。右下にいる人物が遠藤さん ©2019 株式会社 音響ハウス

 それで、そもそも音響ハウスで長年メンテナンスをずっとやってらっしゃる遠藤さん(ポスター右下の人物)に興味を持たれたそうで「老舗のレコーディングスタジオにこういう人がいて、それでいまだにここは、新しい人も好んで使うスタジオとして生き残っているんだ」と。それで、だんだん監督の中で「スタジオを主人公にした映画を撮ったらどうだろう」というイメージになっていったという話を聞きました。

 映像の中で、すごい顔ぶれのかたがコメントしてますよね。そういう人たちに、いろんな当時の音響ハウスの話を聞いて構築したいのだけれど、音楽にまつわる作品だから、やっぱり現場で音を作って、録音をしている画も欲しいな、なんて話も出てきて「だったらテーマ曲も作っちゃいましょう」「それじゃあ作ります!」ってぼくが言って。その日家に帰る途中で、もうこの曲が思いついていたので、忘れないうちにやっておこうと思って、そのまますぐに家で作り始めて。