『進撃の巨人』や『BLEACH』との共通点
──でも、やさしさだけだと男心にはそこまで響かない気もしますが。
新村 男の子の心を打つのは鬼の存在だと思います。『進撃の巨人』にも同じことがいえますが、「鬼が人間を食う」という設定は脅威としてわかりやすい。作者の吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)さんは『ジョジョの奇妙な冒険』のファンらしいんですけど、『ジョジョ』の1部と2部も吸血鬼モノで、食われた人間が吸血鬼になって増えていきます。
それは人間にとってものすごく脅威ですよね。その脅威に対し、主人公が人間を守るための組織に加わり、みんなで同じ制服を着て戦いを挑む。『BLEACH』ともちょっと似ているかもしれません。強い先輩がいて、励まし合う仲間がいる。『鬼滅』は逆境モノであると同時に隊士モノで、学園モノでもあるんです。ジャンプ伝統のキャッチーな必殺技も出てきます。
──そこは大人の男も好きな要素です。
新村 『鬼滅』は当初、アニオタのあいだで大きな注目を集めた作品で、それによってアマプラ(アマゾンプライム)などでランキングが上昇。コロナによる一斉休校のために家でヒマを持て余していた小学生の目にとまった、という経緯があります。老若男女にウケる要素が詰め込まれていますが、アニオタを唸らせる作品でもあるんですよ。
原作とテレビアニメは戦闘シーンが全然違う
『鬼滅』はなぜアニオタに刺さったのか。今度は、やはり週15本のアニメを観て、アニメ関連の記事も書いている西川大介さん(仮名、38歳)に語ってもらおう。
──アニオタとして『鬼滅』のどのあたりに魅力を感じたんですか。
西川 私に限らず、アニオタが『鬼滅』に注目した理由は、まずufotable(ユーフォーテーブル)というアニメ制作会社が作るCGのすごさだと思います。たとえば、炭治郎は「水の呼吸」の使い手で、アニメでは必殺技を繰り出すときに刀の回りを水が浮世絵のように渦巻くんです。原作はそこまでの描写ではなく、もっとあっさりしているんですよ。
漫画はかわいい絵柄なので小学生の女の子も安心して読むことができるんですけど、大人のオタにとってちょっと物足りない。戦闘シーンの描写も『NARUTO』や『BLEACH』などの作品に比べると迫力がありません。ところが、テレビアニメでは、戦闘シーンの長さ自体も原作の3倍ぐらいになっているんです。