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劇場版『鬼滅』のポイントは「泣かせ」

──最後に「ここに注目しろ」という劇場版の見どころを教えてください。

西川 テレビアニメ、そして劇場版では、戦闘シーンのほかにも原作にはない大きな要素が追加されています。それは「泣かせ」です。たとえば、ある山で下弦の伍の十二鬼月である累(るい)が率いる疑似家族の鬼たちと炭治郎たちが戦うシーンがあります。

 累やその母親役などを演じていた鬼が倒されると、死に際に彼らの過去が悲哀の漂うトーンで挿入されます。これは、原作ではさらっと流されている部分です。観ている人たちが感情移入しやすいように、ペーソスのディテールをしっかり作り込んでいるんですよ。

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──つまり、哀しい過去を見せることで鬼に同情を集め、泣かせようとしていると。

西川 そうです。普通なら敵のキャラの過去を見せる以上、そいつはその後主人公たちの仲間になります。あるいは戦う前に過去を見せることで、よりバトルを盛り上げる。それが従来のパターンでした。ところが、「鬼滅」では戦いが終わり、鬼が死ぬ間際になって過去を見せるんです。その意図は「観ている人を泣かせたい」という以外にないと思います。

©文藝春秋

 もともと鬼も人間なので、愛情のない家庭で育ったりと、それぞれ物語があります。さんざんひどいことをやったけれど、じつはこんな過去をもつかわいそうなやつだった。それでも罪を背負って死んでいくという儚さ。こういうアニメはなかなかないと思います。

──そうすると、劇場版も当然「泣かせ」ポイントがたくさんあるわけですね。

西川 原作になかったセリフを追加し、泣かせるシーンにかなり尺を取っています。ネタバレになるので詳しくはいえませんが、一番の見どころだと思うのは、魘夢(えんむ)という夢を操る血鬼術を使う鬼とのシーンで、あのやさしい炭治郎が見せる感情の爆発です。制作側が泣かせようとしているのはわかっているんですが、それでも途中で3回泣きました。

◆ ◆ ◆

 永遠に続くかのようなアニオタによる熱い『鬼滅』トーク。これらはあくまでいちファンの見解だが、彼らがそれだけ『鬼滅』に魅力を感じていることは理解できただろう。

 ちなみに、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』はテレビアニメの続きなので、まずそれを観ておかないと話にならない。全26話もあるが、もし映画館に行くなら動画配信サービスでテレビアニメをチェックしてから劇場版を観ることを強くおすすめしたい。