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ヒットは「主人公が優等生だから」なんかじゃない…古参オタクの語る『鬼滅の刃』の魅力

2020/11/07
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──たとえば、どういうシーンが原作より長くなっているんですか。

西川 一例を挙げれば、毬の血鬼術を使う朱紗丸(すさまる)という鬼と禰豆子が毬を蹴り合うシーン。この場面は原作では3コマ程度だったのに、テレビアニメではかなりの尺を使って長々と描かれています。アニオタというのは、CGがすごいとか作画がすごいとか、それだけでも評価するんですよ。

「鬼滅」はコラボ商品の多さも目を引く。「SLぐんま」とのコラボイベントの様子 ©文藝春秋

──他にもアニオタに刺さった要素はありますか。

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西川 アニオタ界隈で早くから話題になったのが豪華すぎる声優陣です。テレビアニメではメインキャラではない鬼が毎回出てきて炭治郎たちに倒されるので、ギャラの高い大御所声優をゲスト出演のような形で起用することが可能だったんでしょう。そうした雑魚鬼を担当したひとりに『スラムダンク』で流川楓をあてた緑川光さんがいます。

『ジョジョ』出演の人気声優があてた「年号がァァ!」

──緑川光さんといえば、むちゃくちゃ有名な声優さんですよね。

西川 オタク界隈では、グリーンリバー(緑川)を略して“グリリバ”と呼ばれている大御所のイケボ(イケメンボイス)です。その緑川さんが序盤で登場する雑魚の鬼をやったんですよ。また、鬼殺隊の最終選別の会場である藤襲山に長年閉じ込められ、炭治郎に倒された手鬼(ておに)も、『ジョジョ』でディオ・ブランドーをあてた子安武人さんが演じています。

 この手鬼というキャラには「年号がァァ! 変わっているゥー!」という話題になったセリフがあるんですけど、もともと子安さんは突飛なセリフで知られている声優さんなので、「子安がまたなんか言っている」とアニオタはみんな大喜びしていました。

©文藝春秋

──ほかにもチョイ役で有名な声優さんが出ていたりするんですか。

西川 山奥から浅草という都会に来て、疲れはてた炭治郎が屋台で山かけうどんを食べるシーンがあります。この屋台の店主をやったのは劇場版『AKIRA』で主人公の金田正太郎を演じた岩田光央さんです。

 ここは原作では1コマで、「あいよ」としか言わないキャラなのに、セリフと尺がかなり増えていました。制作側が話題つくりのためにシーンを追加し、せっかく出演する岩田さんの“見せ場”を作ったのではないでしょうか。

 公開されている劇場版でも、アニメファンなら知らない者はいない有名声優の石田彰さんが上弦の参(鬼の位のこと)の十二鬼月、猗窩座(あかざ)を演じています。その石田さんと鬼殺隊のリーダー格のひとりである煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)を演じた日野聡さんとの掛け合いがまたすごい。アニオタにとって見どころのひとつです。