「猿渡慶太、サルくんは彼しかいないなと思います」
無断欠勤する慶太にプンスカしつつも彼がいない状況になんだか寂しさを感じてしまうモンキーパス経理部の面々。留守中の慶太の部屋を訪れ、幼い頃から彼が書き続けてきたオモチャのアイデア・ノートをめくりながら息子のオモチャ開発に対する誰にも負けない情熱と才能を認める父・富彦(草刈正雄)と母・菜々子(キムラ緑子)。「ほころびだらけなんですよ! 何もかも! わたしが繕ってみせます」と叫ぶまでに憤慨し、呆然とするほどだった慶太のあれこれを振り返る一方で、長年にわたる彼女の片想いの恋が動き出したと知るや「よかったじゃん。15年の片想い、やっと報われて。早乙女さんが運命の人だといいね」と喜んでくれ、その相手・早乙女健(三浦翔平)とのデートに着けていくアクセサリーを見つけてやろうとする彼の掛け値なしの優しさを噛みしめる玲子。
実際に放送された第4話のなかで慶太がいないのは2日間、ドラマの尺としては60分。にもかかわらず、ほとんどの登場人物たちが慶太の不在に寂しさを感じて、彼という人間を慈しむ。また、彼らと同様に観ているこちらも天衣無縫で人たらしにもほどがある慶太の言動に笑わされ、ふいに見せる掛け値なしの優しさに心が温かくなったのをバァーっと思い出すのだ。そして、慶太を溌剌と演じていた三浦春馬さんの俳優としての力量に改めて唸り、「猿渡慶太、サルくんは彼しかいないなと思います。本当に素晴らしいあのお芝居を見てほしい」というドラマ放送前の8月2日に松岡茉優が自身のラジオ番組『松岡茉優 マチネのまえに』で放った言葉がフラッシュバックし、「そのとおりでした!」と大きく頷いた。猿渡慶太と三浦春馬さん、どちらもかけがえのない人物だと思わせてくれる物語になっていて目が潤んだ。
しかも第4話は最終話として放送されたが、そこで物語は終わってはいない。娘になにひとつ不自由をさせたくないと横領を働いて逮捕された父親と再会して彼の過ちを赦し、ひたすら貢ぐことで満たされていた早乙女への気持ちを整理し、あれほど金に無頓着だった慶太に渡したおこづかい帳にしっかりと使いみちが書き込まれているのを確認するなど、自身や慶太を取り巻いていたおカネの“ほころび”をひとまず繕った玲子が、「隣にいると気づかないけど……隣にいないと……」「……会いたい、みたいです。猿渡さんに」と慶太のペットであるロボット・猿彦に自分が気づいた想いを語りかけ、明け方にやっと帰ってきた慶太らしき人物と向き合う。まさにタイトルの『おカネの切れ目が恋のはじまり』を地でゆくラストシーン。第4話は終わりのようで始まりでもあったのだ。