企業倒産の数は7年連続で減少し続けている。そんな「無倒産時代」だからこその「転ばぬ先の杖」としての需要だろうか。どこにでもあるような中小企業の倒産事例を豊富に集め、レポート風に端的にまとめた本が快調に売れている。
「信用調査会社の方が書いた本なので、取材対象にインタビューを試みて、倒産の背景を深掘りするようなアプローチはしていません。淡々と客観的に、会社が潰れていく過程をまとめ、類型化している。一般の方にも興味深く読んでいただける内容に仕上がっていますが、実際に倒産を見聞きすることの多い、金融業など玄人筋の方からも高い評価を受けています」(担当編集者の野崎剛さん)
倒産に至る要因はさまざまだ。ネット通販の普及や価格帯の二極化に対応できなかった京都の呉服屋のように、産業構造の変化についていけなかったケース。本業は順調なのに、多角的経営や業務外の金融取引にのめり込んで損失を出したケース。不正会計や闇経済の人脈による悪辣な手口といった犯罪行為の絡むケース。ひとつひとつ読み解くと、今の日本経済が抱える問題が浮かび上がってくる。
「企業の経営悪化は、なんとなく外部に伝わるときもあれば、隠されていた都合の悪い情報がいきなり噴出するときもある。本書にはさまざまな情報から倒産を見抜くヒントが詰まっていると思います」(野崎さん)
2017年4月発売。初版9000部。現在9刷12万5000部