独自の魅力を持ったヒットメーカーたち
一方で、ヨシタケシンスケは2頭身のデフォルメされたキャラが特徴である。2013年にりんごのあらゆる可能性を探索する『りんごかもしれない』でデビュー。
門野編集長はこの作品が、大人が絵本を読むきっかけとなるような1つの潮流を生み出したと感じているという。
「ヨシタケさんは特に“言葉”にこだわっています。だからと言って正解を示そうというのではない。なので『哲学絵本』と言われています。ご本人が仰るには、筑波大で美術を専攻していたけど、そこで先生に『絵が下手だな』と言われたらしいんですよ。クラスの中でも一番下手だったと。
それで見て描くのが下手なら、自分は記憶の中にある絵を的確に描くことができる人になろうと思ったそうです。でも、それで今の状態に仕上がったというのは、結局絵がうまいということなのかもしれませんけどね」
確かに彼の作品を読むと脳みそがぐるぐると動き出すような感覚になる。
押しつけがましくなく、こちらの考えを促すような文章がつづられているからだ。
「今のヨシタケさんは10出せば10売れる」と言われるほどの理由は、そうした魅力に惹かれる大人の多さを示しているのかもしれない。
猫のキャラクターも人気の要因に
ヒグチユウコも確実にヒットが期待できる作家で、『MOE』でも繰り返し特集が組まれている。
「小学校中学年より上ぐらいじゃないと理解できない内容が多いかなぁとは思いますが、うちで出している3部作(『せかいいちのねこ』『いらないねこ』『ほんやのねこ』)は全部で30万部以上売れています。それにヒグチさんはグッズの人気も非常に高い。元々画家さんなので、絵を使っての商品開発もクオリティの高いものができるのだと思います」
その猫のキャラクターも大きな人気のファクターだ。
『風の谷のナウシカ』に登場する巨大生物の王蟲が好きだったため、当初は古生物や異形の物ばかりを描いていた(いまでも作品にはよく登場する)というが、自ら猫を飼い始めてからすっかり猫のキャラクターが本人の代名詞となった。