絵本のキャラクターで一番人気のモチーフは……
また、門野編集長が言うには『MOE』では年1回は必ずムーミン特集を組むという。
それだけ昔ながらの“ムーミン”というキャラクターの人気は安定しているといえるのだが、それ以外では昨今のブームも反映してか、やはり猫をモチーフにしたキャラクターが強いのだそうだ。
「前述のヒグチさんの作品以外にも、弊社の作品では他に『ノラネコぐんだん』があります。マンガですが、『夏目友人帳』や『3月のライオン』にも猫のキャラが出てきますからね。昔よりも猫比率が上がっていて、猫って強いなあと感じるここ数年ですね(笑)」
昨年のMOE絵本屋さん大賞も『なまえのないねこ』(文・竹下文子/絵・町田尚子)が受賞した。
「実はヨーロッパだと意外とネズミをモチーフにしたキャラクターの絵本が多いんですが、日本ではそんなに見かけないですよね。『ノンタン』シリーズや『100万回生きたねこ』は猫の印象で楽しんでいたものではないと思うし、いつからなんですかねえ、猫がこんなに盛り上がったのは(笑)」
11月2日に白泉社から発売されたヒグチユウコの新刊も猫が主役である。
親交のあるマンガ家のキューライスが学生時代から温めていた絵本のアイデアを形にしたもの。
からだのながい猫のお母さんがいて、ある風の強い日に子猫が尻尾の方まで飛ばされてしまう。
果たして子猫はお母さんにまた会うことができるのか。お母さんの体をたどりながらの冒険を描く物語である。
「ヒグチさんの猫にはほとんど実在のモデルがいて、今回もそうだとうかがっています。飼い主とヒグチさんに交流があって描いたのがこの子猫なんです」
現代の人気絵本作家の共通項とは?
作風はばらばらの人気作家たちだが、門野編集長はそこにひとつの共通点も見出しているという。
「いい話でも悲しい話でも、絶対に〇〇しちゃダメ、ということでもいいんですけど、読者と“感情の共有”ができるものはヒットする可能性がある気がします。その作品に教訓があるかどうかまでは読んだ人に判断してもらえばいいと思いますが、なにか『あぁ、これはわかる!』という感情が描かれていることが大事なのかなと。そのうえで、子どもには絵本として読んでもらえばいいし、大人には絵本はもちろん画集として見てもらってもいいのかなと思います」
新しい時代に突入しつつある絵本の世界。
今度書店に足を運んだ時には、久しぶりに絵本コーナーに足を踏み入れてみてはいかがだろうか?