1ページ目から読む
2/3ページ目

 このお話は、その丹波さんと大ヒット刑事ドラマ『Gメン’75』(’75年)で共演した、というより最若手Gメン・津坂真一刑事役を演じた俳優の岡本富士太さんから以前、お聞きしたお話である。丹波さんは、日本を舞台にしたこの映画で、ボンドに協力する公安のトップ・タイガー田中を演じた。当時、岡本さんは勉強・見学も兼ねて、学生アルバイトとしてこの映画の現場に参加されていた。『Gメン』以前に丹波さんと岡本さんの“出逢い”があったことに一抹の感動を覚えてしまうが、それはまた別の話ということで。

遅刻魔の丹波さんを、コネリーさんが自ら注意しに……

 その日本ロケでの撮影現場で、丹波さんは毎朝遅刻の連続。当然、現場でも問題となり、たまりかねたコネリーさんが、主演という立場から注意を喚起しようと決意。その朝も寝坊で現場に来ない丹波さんを、彼が撮影中に宿泊していたホテルニューオータニに訪ねた。そのときコネリーさんとともに数名のスタッフも同行したそうだが、その中に岡本さんもいたという。丹波さんの部屋の前に立ったコネリーさんがコンコンとドアをノックした。

007は二度死ぬ』DVD(販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン)

 するとガウン姿で寝ぼけ眼の丹波さんが堂々とドアを開けて出て来た。コネリーさんがすかさずクレームを入れようとすると、丹波さんはいきなりコネリーさんに抱きついて「おう! おう!! ショーン! グッモーニン!! いや、じつに楽しい、素晴らしい現場だよ。しかも今朝は主演のショーン自ら迎えに来てくれるとは!? こりゃあスグにでも現場に行かねばならんな。よし分かった。みなまで言うな。支度をしてすぐ降りて行くから。下で待っていてくれ給え!」、そう言ってドアを閉めたという。さすがのコネリーさんも呆れ顔。

ADVERTISEMENT

「ダメだこりゃ」という表情を浮かべたが、それがほどなく失笑に変わったという。このとき、丹波さんが日本語でこう言ったのか、得意の英語で話したのかは残念ながら聞きそびれてしまったし、その後、丹波さんの遅刻癖が直ったのかどうかも聞き忘れてしまった。