さらに、毎日のノルマを決め、野村さんが「工場長」として作業を見守ることになった。「工場長」という役職はないのだが、私たちはそう呼んだ。
製造工程に盛り込んだ工夫
乾燥には1週間かかる。数日でつくり直してもらわなければ、とても間に合わない。とにかく何1000本とつくってもらい、そこから300本を納品することにした。
でもまた、できていなかったら、もうあとは、自分でつくるしかない……。
私は切羽詰つまっていた。この時点で、私が削れる時間は睡眠時間しかない。
いつから寝られなくなるかな……。
そんなことを思いながら、数日後、もう一度、埼玉の物流センターに行った。滝川役員も心配して、朝から車を出してくださった。現地ではまた、野村さんが待っていてくれた。
「一応、僕も検品したんだけれど、どうかな……」
すごく自信がなさそうに、できあがったストローを見せる。野村さんは私と正反対で、体型も細身だし押し出しも強くない。でも今回は、野村さんも一生懸命、何百本と巻いてくれていた。
「目が見えない……」と言っていたシルバー人材の方々も頑張ってつくってくださり、おかげで、数1000本ものストローができあがった。そこから300本を選りすぐると、なんとか納品できそうだ。
シンポジウムで初めて木のストローを納品
シンポジウム前日、もう一度、滝川役員の車で物流センターに行き、乾燥させたストローを袋詰めした。翌朝、シンポジウムの会場に届けると、ちょうど受付が始まったところだった。
木のストローは受付のときにお渡しするはずだったので、滑り込みセーフというか、ややアウトだったのだが、初の納品は終わった。ストローはシンポジウムの参加者に配布され、とても喜んでいただいたそうだ。
実はこのシンポジウムをきっかけに、横浜市の高橋課長とはさらに大きなプロジェクトに取り組むことになるのだが、それはもう少し先の話となる。