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《驚愕の“敵認定”》韓国で提出された「反日丸出し法案」の実態とは

『反日種族主義』著者らも危うい「正しい歴史」強制社会

2020/11/13

『反日種族主義』『帝国の慰安婦』…日韓の歴史研究者たちも危険に

 この法案は、明らかに具体的にターゲットが定められているようにみえる。たとえば、日韓両国でベストセラーになった『反日種族主義』の著者たちだ。もし、この法案が通過すれば彼らは一人の例外もなく処罰対象になるだろう。

 著者たちは「朝鮮人徴用労働者は平等な賃金を受け取った」「韓国歴史教科書には歪曲がある」といった見解を主張しているが、これらの見解は日本内でも以前からあったものだ。もし韓国大統領がこれらの見解を展開する日本の出版社、財団、研究会などの団体を「日帝植民統治擁護団体」に指定したら、『反日種族主義』の著者たちは莫大な罰金か懲役刑を避けられなくなる。

現地韓国でもベストセラーになった「反日種族主義」 ©文藝春秋

 日韓両国で大きな論争を巻き起こした『帝国の慰安婦』の著者・朴裕河(パク・ユハ)も例外ではない。

 これまでも、批判者たちは朴教授が動員の構造や背景を説明するために用いた「(日本軍と慰安婦は)同志的関係」という言葉の表面的な文字面だけに執着し、それが慰安婦の名誉を棄損したと執拗に朴教授を攻撃してきた。

 朴教授は今も長い法廷闘争を続けているが、もしこの法案が通過したら、「戦争犯罪被害者の名誉を棄損した人」だと認定され、懲役や罰金が科されかねない。こんなことがまかり通れば韓国内の研究や報道、評論の世界は萎縮せざるを得ない。生き残るのは日本統治時代の全てを地獄のように描く言説だけだ。

『帝国の慰安婦』の著者・朴裕河氏 ©文藝春秋

もはや「宗教」の世界

「歴史的事件」の評価は本来、新しい事実が発見されれば180度変わってしまうことも少なくない。どんな事件においても歴史的な評価は変わりうるものだからこそ、政治が勝手に「正解」の評価を固定させようとするべきではない。歴史的評価に対して荒唐無稽な主張があっても、やるべきことが「その事実を検証して是非を判断すること」に変わりはない。

 今なお、世界の各地で「地球は平たい」、「人類は月に行ったことはない」という主張をする人たちがいる。だが、科学者たちはそれらの主張に対し、「監獄に送ろう」「罰金を取ろう」などと主張することはない。他の主張をする人がいれば、お互いの理論を戦わせて真実を確認すればいいと、科学者たちが知っているからだ。疑問を持ち、異論を唱えること自体を否定する行為は、科学的態度とはほど遠い。もはや「宗教」の世界だろう。

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