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「他の部屋でも打ってる人間はゴロゴロいるやろ」

 215の部屋は匂いこそキツいものの、部屋中の物という物が1ミリとも狂わず直角に並べられていたらしい。隣の部屋のスマホのバイブ音だけで怒り狂うくらいなので、慎重にならざるを得ない。その時点で皆川さんは気付いていたとはいうが、早い話がドポン中。

 棚の間からは使用済みの注射器が出てきたし、2階の廊下にあるゴミ箱にはパケの袋も捨てられていた。

宿泊客が覚せい剤を打つのに使ったとみられる注射器(筆者提供)

 かといって特に通報するわけでもない。「こんなの日常茶飯事や」と皆川さんは言うし、店長も警察を呼んだところで面倒なことになるだけなので、黙って出て行ってもらったというわけ。初めて使用済みの注射器を見た私は思わずテンションが上がってしまったが、「他の部屋でも打ってる人間はゴロゴロいるやろ」とのこと。

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「たまに血走った目の奴がホテルに駆け込んでトイレだけ借りることがある。そういうのは大体個室でシャブ打っとるからな。従業員としては注意せなあかんだろうけど、変に刺激するとホンマに刺される。危ないと思ったらとにかく放っておけ」

(筆者提供)

 2年ほど前、そんな感じでK太郎がシャブ中に胸ぐらをつかまれて騒然となったそうだ。(略)

【5月25日】住所不定無職

 南海ホテルには何をして生活しているのか分からない、住所不定無職の長期滞在者が数人いる。1階にいるある男は、服装、髪型などドヤとはそぐわないほどしっかりとしており、成金といった雰囲気まである。

 この男は1日中部屋にいるが、毎日午後2時半頃、分厚い封筒が20枚ほど入った紙袋を持ってどこかへ歩いて行く。本当にそれしかしていない。

フロントの中にある住民についてのホワイトボード(筆者提供)

 K太郎が密かに想いを寄せているという通称“ブーちゃん”はその名の通り太った女の子。K太郎は1週間に1回、率先してブーちゃんの部屋に掃除に入っては、1人で10分も20分も何やら楽しんでいるそうだ。歳は20代で私も可愛いと思う(私がデブ好きということもあるが)。なぜこんな女性がこんな場所に何ヶ月も住んでいるか本当に分からない。