文春オンライン

2020/11/22

 家事・育児もしっかりやって一見リベラルに見えるけど、それ自体が今、社会で求められる「新しい男らしさ」だからやってる、というだけなんでしょうね。とはいえ、なにもやらない亭主関白の夫よりかは全然マシだから、モヤモヤしますよね。

 特に団塊ジュニア世代は「男なら泣くな!」「とにかく稼げ!」と言われて育ち、学校だって会社だって激しい競争を突破しなきゃ入れない苛酷な状況を生き抜いてきて、今はそれにプラスして「家事も育児もやって当たり前」。どういう価値観で育てられるかは自分で選べたことでもないのに、変化する時代の犠牲者のようで大変だろうと感じるところもあります。

「彼女の世界を知りたいから」と話す男性に感銘を受けた

 ただそれでも大人になったなら、自分で自分を教育し直すべきだと思うんです。自分はどんな環境で生まれ育ち、そのときの社会はなにを良しとしていたのか……そうやって自分を相対化して見つめ、古い価値観や慣習を“学び落とし”て、アップデートし続けることが必要ではないでしょうか。

――学び落としができた、男らしさの呪縛から解き放たれた男性のロールモデルで思いつく方はいますか。

太田 わかりやすい著名人はすぐには思いつきませんが、ジェンダー平等に関するある勉強会で、パートナーについてやって来た男性に参加理由を尋ねたら、「彼女の世界を知りたいから」と言われたことがあったんです。自分には正直分からないけど、相手のことを理解するために学ぼうとする彼の姿に感銘を受けました。

 

 こういった、妻やパートナー、友人の女性から学び、導かれることに抵抗がないというのは大事なポイントだと思います。はじめはおずおず、いやいやでも、女性が言っていることをすぐには全部わからなくても、理解しようと努力する気持ちがある男性なら、自分で自分をアップデートできるのでは。

 正直、ジェンダーバイアスだらけの日本社会で育ってきた世代の男性が根本的なところから認識をアップデートするのはかなり大変で、時間もかかると思います。でも、最低限、女性が言うことに耳を傾ける謙虚ささえ備えていれば、希望はあると思います。話を聞く、というのは非常にシンプルで簡単に思えて意外と、心持ちだけではできないんです。

 それでも読者の方の声の中に、70歳過ぎの九州男児の義父が、私の本を読んだことで自分がずっと子どもや孫に「男らしさ」を押し付けてきたことに気づき、学び落としをしているというものがありました。こんな風に、いくつになっても周りの声に耳を傾けて自分をバージョンアップしていける男性がもっと増えていけばいいですね。

撮影=深野未季/文藝春秋

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