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「“体内受精”もあるの?」「それはセックスです」…息子の性の質問に、女性弁護士が淡々と答える理由

『これからの男の子たちへ』著者・太田啓子さんインタビュー

2020/11/22
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――「有害な男らしさ」とは具体的に、どんな言動でしょうか。

太田 これまでの社会が「男らしさ」としてきたものの中には、強さで序列をつけ、暴力的で支配的であることが良しとされる価値基準がありました。

 地位、名誉、経済力、女性関係……なんでも人より上に立つことがもっとも重要なので、「成功した男」になるためには深夜まで働いたり、弱音や愚痴もこぼさない。しかしそれによって心身のバランスを崩すこともあり、実際、過労死やアルコール依存症は女性より男性に圧倒的に多く、自殺率も男性のほうが高いですね。

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 また、先ほど挙げたモラハラ夫たちは妻の経済的な脆弱性につけこみ、横柄な態度を取ったとしても自分から離れられるわけがないと理解した上で問題行動を起こします。つまり彼らの根底には、「俺たちは女より上である」という女性蔑視思想がどっしりと根を下ろしているのです。

「男子ってバカだよね」と「カンチョー放置」の問題

 そんな有害な男らしさの萌芽になりかねないと思い、男子の子育てで気をつけたいこととして本で挙げたのが、「男子ってバカだよね」問題や「カンチョー放置」問題です。

 カンチョーは、他愛もない男子同士の「おふざけ」としてずっと看過されてきましたが、相手の肛門に指を突き立てる行為は、どう考えても性暴力です。最近、30代の男性がエアコンプレッサーを同僚男性の肛門に突き刺して死亡させた事件がありましたが、これも「カンチョー=悪ふざけ」という意識の延長で起きてしまったとしか思えません。

 

「スカートめくり」も同様で、水着で隠れるような部位はプライベートゾーンといって、絶対に他人が叩いたり、冗談でからかったりしてはいけない場所です。

 こういったいたずらをされた女の子に対して、親が「男子ってやんちゃよね」「男の子は好きな女の子をいじめちゃうのよ」などとかばう「意地悪は好意の裏返し」発言は、男子にとっては暴力を正当化する言い訳を学ばせることになり得ます。

 また女子には、「……私を好きだというのが理由なら、我慢した方がいいのかな……?」と、暴力に対して憤る気持ちに封をさせてしまうかもしれません。

 

「男の子はバカでかわいい」という言葉は、「バカ」でいることの免罪符になります。他方で、今の日本において、女性は親から「女の子はバカでかわいいね」と言われることはなかなかなく、とても非対称的だと思うんです。

「女の子のほうが大人になるのが早い」なんて言葉もよく聞きますが、男性は大人になっても幼稚さが容認される一方で、女の子は社会から早く成長させられているということもある気がしてなりません。