午前3時起床で週6日の勤務
ユミさんの一日はとてもハードだ。まだ夜明け前の午前3時すぎに起床して、二人の子供と自身のための弁当づくりや夕食の仕込みなど、一通りの家事をこなす。その後、勤務先である運送会社には5時半に出社。アルコールチェックや車両点検などを済ませて、6時すぎには車庫を出発する。忙しい時期には、途中の休憩を挟んで午後8時まで乗務することもある。月~土曜日まで週6日勤務している。
午前3時起床で週6日の勤務。ハンドル操作の難しい大型トレーラーの運転は精神的にも肉体的にも疲れるはずだ。しかし、ユミさんは「慣れてしまえば、全然平気ですよ」とマスク越しの笑顔で否定する。
ユミさんが大型トレーラーのハンドルを握り始めたのは5年前。すでに25歳の時には大型トレーラーを運転するために必要な大型免許と牽引免許を取得していた。しかし、すぐにはドライバー職に就かず、二人の子供が成長するのを待って、この仕事を始めた。
前職が自動車販売に関係する仕事だったこともあり、車の運転はもともと好きだった。
大型トラックのドライバーの仕事には昔から憧れがあり、いつかはそのハンドルを握ると心に決めていたという。
トラックドライバーの仕事は、まず小型トラックで運転のノウハウや経験を積み、その後、中型トラック、大型トラックの乗務にシフトしていく、というのが通常のキャリアパスだ。
ところが、ユミさんはトラックドライバー職を一度も経験しないまま、いきなり大型トレーラーのドライバーになった。その度胸もさることながら、必要な免許はすでに保有していたとはいえ、トラックの乗務経験がゼロで、しかも女性の採用を決めた会社側にとっても、勇気のいる決断だったに違いない。
ユミさんは「4トンや10トンの運転手から経験を積んでいかないと、大型トレーラーのハンドルはなかなか握らせてもらえないと聞く。そういう意味で未経験者の私を採用してくれた会社にはとても感謝している」という。
担い手不足と高齢化が深刻な海コン輸送
近年、大型トレーラーを使う海上コンテナ輸送はドライバー不足に直面している。その深刻さの度合いは、同様の課題を抱えている大型トラックによる長距離輸送や宅配便の領域よりもはるかに高いかもしれない。
実際、すでに港での通関許可は下りているものの、運び手を確保できないため、ヤードからコンテナを搬出できないなど、ここ数年、国内の主要港では円滑な貿易に支障を来たす事態が発生している。
ドライバーが集まらない理由の一つに、海上コンテナ輸送の過酷な労働環境がある。主要港のコンテナターミナルは慢性的な混雑に見舞われており、それに伴いドライバーたちはターミナルのゲート前で長時間の待機を余儀なくされている。その影響もあって海上コンテナ輸送は仕事としての拘束時間がとても長い。