普通の漫画にはない異世界モノの特徴とは
そんな読者のニーズを満たすために、異世界転生ものの特徴として、作品がとにかく読者にストレスを与えないように作られているのだ。これが多くの読者を獲得できた大きな理由の1つだといわれている。
「従来の漫画の構成は、『主人公が努力を重ね、成長して敵を倒す』というのが王道のパターンでした。しかし、異世界漫画の大半は主人公が努力せず、最初から“チート”と呼ばれる反則的に強い能力を持っていることが大きな特徴の一つです。
序盤に物語の世界観の説明や、主人公が成長していく姿などを省く――。いわば、起承転結の起承を省いた形で物語を進めていくことで、読者は敵を倒す爽快感を手っ取り早く味わうことができますし、主人公が活躍し、周囲から賞賛されることで承認欲求を満たせるんです。これが、時間をかけず“おいしい”ところだけを楽しみたいという読者の需要とマッチした結果が、今の異世界漫画ブームなんだと思います。
当初は“異世界転生”という形で、現代社会から別の世界線に転生するという形をとっている作品が多かったのですが、最近はその段階も省略されて普通のファンタジー作品になっているものが多いですね」(同前)
物語の転結だけを見せていくというまったく新しい形の漫画だけに、なかなか手を出しづらいと感じる方も多いかもしれないが、手軽に物語の“おいしい”部分だけを楽しめるというのもひとつの漫画の楽しみ方なのかもしれない。
今回紹介する『その門番、最強につき』もそんな作品の1つ。防御力9999というチート能力を武器に、王都の門番に就職した主人公が向かってくる敵を次々と倒していく姿は実に痛快。
異世界系を食わず嫌いしている方にも、試しに読んでみてほしい。
『その門番、最強につき』(原作:友橋かめつ/漫画:あまなちた)は、2020年2月よりウェブサイト「小説家になろう」にて連載開始。ズバ抜けた防御力を持つ主人公・ジークが、ひょんなことからパーティをクビなり、王都の門番としてなりあがっていく様子を描く。現在、『がうがうモンスター』(https://gaugau.futabanet.jp/list/work/5f500f6777656135ee080000)にて連載中。来年3月にコミカライズ1巻が発売予定。