「マンガの二次創作が必ずしも著作権侵害になるわけではない」

 商業マンガにとって、同人誌などに掲載される「二次創作」は、市場を涵養する意味では重要だが、それと同時に厄介な存在だ。

 二次創作とは、主にマンガやアニメの設定やキャラクターを使って、著者以外が新たなストーリーを作ることを指す。厳密には好きなマンガのイラストを描く「ファンアート」も二次創作に該当する。

 いまや二次創作の盛り上がりはマンガの売れ行きと連動するが、著作権的にはグレーな領域でもある。

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 同人誌の市場規模はいまや1000億円近いとも言われ、東京ビッグサイトなどで行われるコミックマーケット(コミケ)は4日間で75万人を動員するイベントとして完全に定着している。

 去る10月6日に知財高裁で興味深い判決が出た。訴訟は、BL同人誌の作家が、無断で作品をインターネットにアップロードして広告収益を上げていたサイト運営企業に対し、損害賠償を請求したもの。

 その中で、「マンガの二次創作が必ずしも著作権侵害になるわけではない」「同人誌にも著作権がある」と裁判所が判断したのだ。

10月6日に知財高裁で判決が出た裁判で対象となった同人誌の一部 Ⓒ文藝春秋

 長らく“原作者のお目こぼし”だと思われてきた同人誌が、実は同人作家が胸を張って誇れるものだとしたらアングラなイメージも随分と変わってくる。

 実際問題として、二次創作が著作権侵害にあたるのはどんな時か、何がOKで、何がアウトになりやすいのか。

 二次創作と著作権について詳しい河野冬樹弁護士に話を聞いた。

知財高裁が含まれる、霞が関の裁判所合同庁舎 ©iStock.com

性的な表現があるものも複数含まれていた

――はじめに事件を整理させてください。今回、サイト運営企業を訴えたのは、原作の著作者ではなく、二次創作をやっている同人作家なんですよね?

「そのとおりです。原著作物は『ハイキュー!!』や『ダイヤのA』、『おそ松さん』など有名な作品ですが、その二次創作(同人誌)をサイトが無断でアップロードしたことについて、同人誌の作者が訴えました」

――今回の訴訟になった同人誌は、「おそ松さん」の四男と次男らしき人物がオフィスでエッチなことをしたり、「ユーリ!!!on ICE」の勝生勇利らしき人物がなぜかミニチュア化してカツ丼の上に全裸で寝ていたり……と、性的な表現があるものも複数含まれていました。絵柄はかなり原作に近いものから遠いものまで千差万別です。しかし一般的な感覚だと、「二次創作には著作権は発生しない」と思いがちです。