二次創作のガイドラインを公表する権利元も増えた
「ですが、『ある同人誌が著作権違反をしているかどうか』を自信を持って言い切れる弁護士はいないと思います。どの部分が保護される表現に当たると認定されるか、現状では線引きがクリアになっているとは言いがたいですから」
――結局のところ、二次創作を行う人はどんなところに気をつけたらいいのでしょう?
「最近は二次創作に関するガイドラインを公表している権利元も増えてきました。映画化もされた『映像研には手を出すな』の著者の大童澄瞳さんは『エロ以外の同人活動はOK』とSNS上で公言していますし、人気ゲーム『Fate/Grand Order』もトレスや過剰な引用は禁止する一方で、イラストや物語の創作については許可をしています。そのガイドラインから大きく逸脱しない限り、許諾は得たものと見なされます。
ガイドラインを公表していない作品に関しては、とにかく原作のイメージを損なわないこと。そういう意味では、やはり原作にはない性表現を扱う同人誌はリスクが大きい。それから“これは公式ではありません”と明記して出所を誤認させないことが大事です」
――2005年には、「ドラえもん最終話同人誌問題」というのもありましたよね。同人作家が『ドラえもん』の最終話を同人誌として発表したところ、権利元(小学館、藤子プロ)が著作権侵害を警告。同人作家が権利元に謝罪し、売上金の一部を支払って和解しました。
「二次創作は、公式と誤認させると問題になりやすいんですよ。この“ドラえもん最終話同人誌”に関しては、とても多く売れたこともあって、実際に『ドラえもん』のファンから小学館に問い合わせが殺到したようです。つまり本物だと誤認した人が大勢いたから、権利元としても動かざるをえなかったのではないでしょうか。ただこの時も、著作権侵害という判決が出ているわけではありません」
――そもそも『ドラえもん』は、原作の「さようなら、ドラえもん(原題:みらいの世界へ帰る)」(初出「小学三年生」1974年3月号)と「帰ってきたドラえもん(原題:かえってきたドラえもん)」(初出「小学四年生」1974年4月号)をベースにした映画『帰ってきたドラえもん』が1998年に公開されていますよね。