1ページ目から読む
3/5ページ目

「ルパン三世」は海外小説の設定を利用しているが……

「もちろんです。判決では『本件各漫画(筆者注:同人誌のこと)のキャラクターが原著作物のそれと同一あるいは類似であるからといって、これによって著作権侵害の問題が生じるものではない』という部分がありますが、絵やセリフ回しが酷似している場合は著作権侵害になる可能性が高いです」

――逆に言うと、「キャラクターに著作権はない」ということですか?

「これも勘違いされやすい部分ですが、キャラクター自体に著作権はほぼ適用されません。小説のケースを想定して考えてみるとわかりやすいです。『ルパン三世』は、モーリス・ルブランの小説に出てくる『アルセーヌ・ルパン』の孫という設定ですが、設定を持ってきているだけなので、無許可であったとしても著作権侵害にはなりません。なので理論上は、『麦わらと呼ばれた海賊ルフィの孫』を主人公に作品を作ることは可能です。名前にも著作権はないので、有名なキャラクターと同じ名前をつけることは可能です」

ADVERTISEMENT

『ルパン三世 カリオストロの城』パッケージ

――かなり意外です。設定こそ作品の肝という感じもするのですが……。

「著作権法の原則は『表現は保護するけどアイデアは保護しない』。タイムスリップや入れ替わりなどのアイデアは、それだけでは保護されない。それが具体的な表現、つまり作品に昇華された時点で保護されるようになる。しかし、アイデアがどう表現にあらわれているのかを証明するのは難しい。小説の場合は、セリフなどを丸写ししていない限りほとんど不可能なのが現状です。それと比べると、マンガやアニメの場合は絵がある分、表現として認められやすいです」

――現実問題としては、キャラクターも設定も借用して構わないけれど、絵や構図が似ていると著作権侵害になりやすいということでしょうか。

「最終的には『容姿や服装がどれだけ似ているか』というところに帰着するのではないでしょうか。これは半分笑い話のように聞こえるかもしれませんが、絵が下手で似ても似つかない場合、著作権侵害にならない可能性もあります」

「おそ松さん」公式サイトのイラスト(右)と、その同人誌。絵柄が全く違う

――では、「ルフィの孫」は?

「それも、絵が似ていれば問題になるでしょうね。それと商標権などの隣接権利についても、『これは同人誌です』と明記してあって読者が誤認する余地がなければ、ほぼ侵害にはならないのが現実です」

――同人誌である時点で全てアウトに近い感覚でいましたが、意外と著作権侵害というのは認められにくいものなのですね。