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映画『空に聞く』小森はるか(映像作家)――クローズアップ

2020/11/21
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「いろんな人の視点が混ざっても映画って成り立つんだな」

――撮影は小森さんと福原悠介さんのお二人がクレジットされていますが、実際の作業分担はどのように行われたのでしょうか。

小森 基本的に私が一人で撮影をしているんですが、インタビューのところだけ福原さんに撮ってもらいました。あのときは私が聞き手をしていたので。

――編集もお二人の名前がクレジットされていますね。『息の跡』では、一度映画祭用につくった編集版があり、その後公開用に再編集した際に秦岳志さんが作業に加わったとうかがいました。今回はどのように編集をされたんでしょうか。

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小森 まず私が編集をして、ある段階になったら福原さんに見てもらい、その意見をもとにもう一度編集をする、ということを繰り返していきました。一人で編集をするってあんまりよくないんじゃないか、と『息の跡』のときから思うようになって。

©KOMORI HARUKA

――具体的にどういうことなんでしょうか?

小森 いろんな人の視点が混ざっても映画って成り立つんだなと思ったんですね。『息の跡』の編集では、私だったらこうはしないのにな、と思っていた部分が、スタッフのみんなはいいと言ってお客さんもすごく印象に残ったシーンとして挙げてくれる、ということが何度かあって。そういうやりとりをしながらつくっていくのは面白いし、自分の作品はそういうものであってほしいなと思うようになったんです。

――映画に必要なショットはあまり悩まず決めているんですか。

小森 構成は最後までなかなか決まらないですけど、どこを使うかはあまり悩まないかもしれません。このシーンが生きるように編集したいとか、そこから考え始めることが多い気がします。それは私が自分で撮影しているからかもしれませんね。

――では編集の段階で人の意見を聞くのも、構成の仕方について、ということですか。

小森 それが大きいと思います。私は論理的に思考するのがすごく苦手で、こう見せるためにはどう並べるか、いつも悩んでしまうんです。

©KOMORI HARUKA

――今回は特にいろんな種類の映像があって、並べ方にも悩まれたんじゃないですか。

小森 悩みましたね。嵩上げした上の町に住んでいる阿部さんがFMで働いていた時期を振り返って話してくれたわけですけど、そこから当時の映像をどうつなげたらいいのか。わかりやすく現在/過去として見せたくもないし、かといって、阿部さんの話に出てきた場面はこれです、といった説明的な見せ方にもしたくない。あっちを思い出したりふいにこっちを思い出したり、人の記憶のように見せたかった。それにはどこを起点にすればいいのかすごく悩みました。現在からスタートするのか、それとも阿部さんがラジオをやっていた場面から始めるのか。いろんなパターンを試したうえで、最終的な形ができあがりました。