ゲートの先に広がっていたのは……
ゲートは施錠されておらず、自分で開けて進入できるようになっている。進入後は害獣が入らないよう、すぐに閉めるのがルールだ。ゲートの先は未舗装で、路面の凹凸も激しい。これまで以上に国道らしさが失われ、完全に林道の様相を呈している。
車で進めるのはここまでだろう。ゲート付近の邪魔にならない場所に車を置き、ここからは徒歩で探索することにした。
この先に待ち構えている小川路峠を目指して、まずは歩きはじめる。しばらくはオフロード車なら通行できそうな雰囲気もあったが、それも長くは続かなかった。車道はすぐに登山道と化し、道幅は最も狭いところで靴の幅しかない。これが国道だと言われても、信じられないだろう。
ちなみに、地図アプリのナビ機能を使って小川路峠を目的地に設定したところ、ここから車で4分と表示された。この道を車で走れと言われても、途方に暮れるしかない。
なぜこんな登山道が国道なのか?
そもそも、なぜこんな登山道が国道に指定されているのかというと、昔は重要な街道だったからだ。現在の長野県飯田市にある飯田八幡宿と、静岡県浜松市にある火の神様・秋葉神社を結ぶ道は、秋葉街道と呼ばれていた。江戸時代には、秋葉参りや善光寺参りなどで人の往来が盛んで、また、海の無い信州と太平洋側を結んでいたため、物流としても重要な役割を担っていた。
その秋葉街道を踏襲しているのが、この国道256号と国道152号なのだが、峠越えの難所が連続することから、国道であるにも関わらず道路の分断されている区間が複数存在する。そうした難所の1つが、この先にある小川路峠だ。
小川路峠の標高は1642メートル。秋葉街道のなかでも最大の難所と言われていたらしい。その言い伝え通り、延々と急な上り坂が連続し、体力を奪われる。足を踏み外すと危険な箇所も多く、全く気が抜けない。休み休み歩いていても汗が噴き出してきて、次第に休憩のペースが早くなった。
歩き始めて2時間半で、ようやく小川路峠に到着した。飯田方面の眺望がすばらしい。峠付近には、鳥居がポツンと建っていた。神社は見当たらないので何だろうと思ったが、どうやら遠く離れた秋葉神社を遥拝するためのものらしい。