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拘置所でもちゃんと寝ていた

西 ファンドを運営されていた頃はムチャクチャ忙しかったと思いますが、寝る時間とかあったんですか?

村上 必ず7時間寝ていました。寝ないと頭が働かない。拘置所でもちゃんと寝てました(笑)。

西 やはりプレッシャーは凄かったですか?

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村上 あえて自分にプレッシャーを課していました。預かったお金は絶対に増やしてあげよう、増やさなきゃいけない、それが自分のミッションだと割り切っていましたから。そういう意味では、日本の上場企業の経営者はプレッシャーがなさすぎるように思います。外国では株主が経営者を選ぶから、成績を上げないと即クビです。ファンドも同じ。投資家がお金を引き上げたら、ファンドはつぶれます。

ファンドマネジャーとして日々、プレッシャーと戦っていた。©村上世彰/西アズナブル/文藝春秋

西 どうやって、そのプレッシャーに耐えていたんですか?

村上 逆にプレッシャーがあるからこそできたんです。それが原動力になりました。好きなことをやらせてもらっているわけですから、投資家にガバナンスされて当然なんです。

西 その状態を楽しんでいましたか?

村上 正直しんどさはありましたね。当時、村上ファンドは「投資の神様」と呼ばれたウォーレン・バフェットの会社と同じくらいの利回りを上げていたんです。それを続けるしんどさはありました。いまは個人で投資してますから、投資先の会社がいい方向に変ってくれればそれでいい、というスタンスです。経営に関して100%オープンに議論して、その結果を受け入れています。

西 変わったきっかけは何だったんですか?

村上 逮捕されたことです。それ以来、他人のお金を預かるのを止めました。大変ですよ、他人様のお金を預かるのは。いまの日本の経営者はさほどしんどくなさそうに見えます。株主から意見聞いて、それを経営に生かそうなんて考えてる人は少ないですから。

ニッポン放送株をめぐるインサイダー容疑で逮捕される。©村上世彰/西アズナブル/文藝春秋

西 でも、村上さんのおかげで、経営者の意識もだいぶ変わったんじゃないですか。

村上 いやいや。やはりコーポレイトガバナンス・コードが2015年に制定されたことが大きかったですね。当時の東京証券取引所や金融庁が中心になってつくったわけですが、ありがたいことです。

お金はしょせん道具なんです

西 最近は、社会貢献を積極的にされていますね。

村上 今年はコロナ禍があったので、抗体検査機器を寄贈したり、PCR検査費用を提供したりしました。たぶん、僕は死ぬまでに自分のお金を使い切れないと思うんです。だから、興味がある案件があればどんどん使って、残さずにおこうと。自分のお金が世の中に良い影響を与えて、それが何十倍、何百倍になって広がっていけばいいなと。そういう視点でやっています。

西  なるほど。最後に読者へのメッセージをお願いします。

村上 若い人に是非読んでもらって、お金との付き合い方を考えるきっかけにしてほしいと思っています。お金はしょせん道具。稼いで、貯めて、 使う、場合によっては寄付する。若いうちから、お金とどう付き合っていくかを考えておいてほしい。そうでなといと、僕のようにお金をいっぱい儲けたけれど、お金に追い回されて、社会からは怒られて、という人生になってしまいます。そういう意味でも、この本は絶対に売れてほしいと思います。もっと宣伝しないといけないですね!

西 実は、第2話の銀座のクラブのシーンで、看板に読者の名前を書いたんです。ツイッターで募集して、リプライをくれた人から先着順に名前を入れてあげたんです。

通産省の官僚として、上場企業の経営者と交遊するシーン。右のコマの看板に読者の名前が……。©村上世彰/西アズナブル/文藝春秋

村上 何でですか?

西 自分の名前が載っていれば、本を買ってくれるんじゃないかと思いまして……。

村上 グッドアイディア! もっとたくさんやってくれればいいのに(笑)。

西 看板だらけの漫画になってしまいますよ。

マンガ 生涯投資家

村上 世彰 ,西 アズナブル

文藝春秋

2020年12月4日 発売