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オレハマッテルゼ、モチ、ビックリシタナモー…珍名馬界のレジェンド馬主が明かす「協会に却下された実況アナ泣かせの馬名」

オレハマッテルゼ、モチ、ビックリシタナモー…珍名馬界のレジェンド馬主が明かす「協会に却下された実況アナ泣かせの馬名」

ジャパンカップで思い出すコントレイル“アナザーストーリー”

2020/11/29

小田切氏作の“珍名馬”馬名

 最初はモチとおなじ2文字の馬名から、ナゾ、ロロ、ワナ、タコ。タコは凧だ。

 イエスマン、ゴマスリオトコ、ノンキ、フウライボウ、オコリンボ、ドモナラズ。

ドモナラズは2010年七夕賞を制し、重賞馬に。ドモナラズがどうにかなったと当時話題に ©Photostud

 オジャマシマス、サアドウゾ、メシアガレ、オソレイリマス、モグモグパクパク、マズイマズイウマイ、オカゲサマデ、サヨウナラ。

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モグモグパクパクの母はワスレナイデ。460㎏台の競走馬としては平均的な体重だった ©Photostud
サヨウナラが現役生活にさよならしたのは2009年。通算成績は45戦7勝だった ©Photostud

 ケイバズキ、トッケンショウブ、オオアタリ、オメデトウ、フクラムサイフ、ニコニコママ、ヨッテウタッテ、スバラシイキョウ、メデタシ。

メデタシの父はコントレイルと同じディープインパクト ©Photostud
メデタシ ©Photostud

 イカガデスカ、ダイコウヒョウ、オモシロイ、ワラッチャオ、ハハハ……。

 小田切氏がつける馬名は単語とか名詞にとどまらない。格好良く、響きのいい、きれいなことばで飾ろうともしない。コロナのなかで飛び交った無責任な横文字とは対照的に、これでもかと人の心をくすぐる、遊び心(アソビゴコロもいた)たっぷりの“珍名馬”の世界が広がっている。小田切氏は言う。

「ぼくの基本は日本語なんです。それは、子供でも、誰にでもわかってもらえるように、日本語で、覚えやすく、少し変わった名前で、馬主としての主張もちょっと入れる。以前は手帳が真っ黒になるほど候補の名前をメモしていました。新聞やテレビで見て、これはいいな、と思った名前をすぐにメモするんですが、候補が100あって、1作もできないこともある。失敗作? それはたくさんありますよ。最初は『なんでこんな名前を付けたの』と言われても、あとで良かったと言われるようになるが、ずっと『なんで?』と言われた馬はずいぶんいました。これまで700頭ぐらい名づけて、愚作が山ほど(笑)」

コントレイルの福永祐一騎手と、その父・洋一さん

 さて、今週のジャパンカップである。わたしには、ひとつだけ小田切氏に訊きたいことがあった。コントレイルの福永祐一騎手についてである。「洋一くんの事故ですね」と小田切氏は言った。福永騎手の父、洋一さんは「天才」と謳われた名騎手だったが、79年の毎日杯で小田切氏のマリージョーイで落馬、一時生命も危ぶまれるほどの大怪我を負い、騎手引退を余儀なくされたのだった。

コントレイルと福永祐一騎手 ©Photostud

「じつは、祐一くんがデビューしたとき、ボンネット(女性用の帽子)という馬の松元茂樹調教師が『祐一くんを乗せたいんですが』と言ってきましてね。彼はマリージョーイがぼくの馬だと知らなかったようなので、事情を説明して『ちょっと待ってほしい』と。ぼくも乗ってほしかったけど、事故の時の勝負服ですからね。まずは『小田切の勝負服を息子さんに着せていいか、ご家族の思いをきいてもらえないか』と調教師に伝えた。それで、知り合いの人を介して福永家に伺いましたら、『ぜひ、乗せてやってください』と言っていただきましてね。そうしたら、勝ったんです。嬉しかったですねえ。それからは祐一くんにはなんども乗ってもらいました」

 ジャパンカップについて、小田切氏は「先々を考えれば、3歳の2頭が鼻面を並べてゴールするようなレースが見たい」と言った。

オレハマッテルゼ、モチ、ビックリシタナモー…珍名馬界のレジェンド馬主が明かす「協会に却下された実況アナ泣かせの馬名」

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