1ページ目から読む
3/4ページ目

歪な事業構造で高コストになっている日本の通信費

 政府が極端に料金を規制しない限り、理屈上、通信料金というのは各国で大きな違いが生じることはありません。その理由は、通信会社の事業構造にあります。

 通信会社というのは典型的な設備産業となっており、事業者のコストの多くは通信機器などの設備投資や回線の運用費なので、人件費はほとんど業績に関係しません。通信会社が保有する通信機器は世界中のどこで買ってもほぼ同じ価格ですから、一定以上のインフラが整備されている国であれば、コスト的な違いが生じにくいのです。

 実際、総務省の調査結果はそれを裏付けるものとなっています。

ADVERTISEMENT

 ではなぜ日本では携帯電話の料金の高さが問題になるのでしょうか。最大の理由は本書のテーマである日本の「安さ」です。

 先ほどから日本の価格が安くなったという事例を紹介してきましたが、商品やサービスの中には、国内事情とは関係なくグローバルな市場環境で価格が一方的に決まってしまうものも少なくありません。国内の所得が低く、物価が安く推移している場合には、こうしたグローバルな商品やサービスの価格は相対的に高く感じてしまいます。通信料金はそうした価格のひとつなのです。

通信料金が高いと感じるのは日本が貧しくなったから

 ここで大卒初任給の差を思い出してください。

 1カ月の通信料金が同じ1万円だったとしても、大卒の初任給が月50万円の外国と、20万円の日本を比較した場合、当然のことながら日本人にとってはかなり高く感じますし、現実の経済的負担も重いということになるでしょう。日本の通信料金が高いという話は、通信会社の料金そのものの問題というよりは、日本が安く貧しい国になったことと密接に関係しているのです。

©iStock.com

 日本の通信料金が不透明だった理由のひとつは、端末と通信サービスをセット販売し、何にいくらかかっているのかを分かりにくくしていたことですが、この現象も、実は国全体の物価と無関係ではありません。

 日本ではアップルのiPhoneが大人気で、市場シェアの7割以上をiPhoneが占めていた時期もありました。しかし、ここまでiPhoneが売れているのは、全世界でも日本だけであり、日本は極めて異質な市場です。