菅内閣が目玉政策の一つとして「携帯電話料金の引き下げ」を繰り返し提言し続けているように、日本の携帯電話料金は、何かにつけ「高い」といわれることが多い。しかし、国際的に見た場合、通信料金そのものが特別に高いわけではない。それでは、なぜ日本人は携帯電話料金を高く感じてしまうのだろうか。
経済評論家として活躍する加谷珪一氏の著書『貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか』を引用し、根本的な要因を探る。
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日本の初任給はグローバル水準の半分
諸外国と比較した場合、あらゆる面で、日本の価格が安いことはほぼ間違いなさそうですが、ここで再び疑問を持った読者も少なくないでしょう。
米国や欧州など、豊かな先進国の価格が日本よりも高いことは納得できるとして、中国やタイなど、新興国の価格までが日本と同レベルかそれよりも高くなっていることについて、にわかには信じられないという人も多いと思います。
当然ですが、中国やタイといった新興国全体の平均賃金は、日本人の賃金が下がったとはいえ、まだまだ安いというのが実状です。しかしながら、以前とは異なり、経済のグローバル化が進んだことで、国が違うとすべての価格が違うという状況にはなっておらず、新興国でも一部の人は、高い賃金をもらえるというケースが増えているのです。
ファーウェイ日本法人の初任給は40万円
先ほど、ファーウェイの日本法人が新人の初任給に月額40万円を提示したという話をしましたが、グローバル企業の場合、どの地域の社員であっても、ほぼ同じ水準の賃金を支払うのが当たり前となっており、その国の平均賃金はあまり関係しません。
つまり、アジア地域の労働者であっても、相応の教育を受けてグローバル企業、もしくはそれに類する企業に就職した人の場合、1年目から数百万円の年収を稼ぐのは当たり前となっています。そうなると、全体の一部とはいえ、日本と同レベルの物価であっても、モノやサービスをバンバン購入する人が一定数存在してもおかしくないことになります。
特に中国の場合、14億人もの人口がありますから、仮にそうした所得層が5%しかいなくても7000万人の市場規模になります。上海や香港にはこうしたビジネスパーソンがたくさんいますから、結果として物価も高くなり、彼等が日本にやってきた時には、「安い」と感じることになります。
グローバル化が進む時代というのは、世界において価格が共通化していくことを意味しており、各国の物価の連動性はより高くなります。
以前の社会では、国が違うと国民の生活水準もまったく違うというのが当たり前でした。しかし近年では、どの国で生活しているのかではなく、各国においてどの階層に属しているのかでライフスタイルが大きく変わるようになっているのです。