貧乏なのに“高級品”のiPhoneを求める日本人
海外市場ではiPhoneは高級品と見なされており、多くの国では6~7割の人がアンドロイドの携帯電話を購入しています。
iPhoneの価格は高く、製品によっては10万円以上もしますが、アンドロイドの場合には安い機種を探せば1万円程度で買えてしまいます。本来であれば、アンドロイドを買う人が多くなるはずですが、これは消費者の好みや感性の問題です。日本人の多くは、どうしてもiPhoneが欲しいわけですから、当然、事業者側もiPhoneの販売に力を入れることになりますが、ここで大きな問題が発生します。
日本は先進各国と比べると物価が安く所得が下がっているにもかかわらず、消費者は高級品であるiPhoneを欲しがっています。
iPhone販売の奇妙なカラクリ
例えば、iPhone11Proの64Gバイトのモデルは日本では約11万円、米国では約1000ドルで売られています。日本人の平均月収は約36万円ですから、日本人は月収の3分の1をiPhoneに注ぎ込んでいるのです。一方、米国人の平均月収は5250ドルなので、iPhoneの価格は月収の5分の1以下です。月収の5分の1でもかなり高いですが、日本人にとってはさらに高い買い物といってよいでしょう。
通信会社としては、iPhoneと通信回線を一緒に販売すれば、iPhoneを欲しがる利用者を自社の通信サービスに誘導できますから、端末と回線のセット販売を強化したいと考えます。
しかし米国人でも高いと感じるiPhoneに、国内で正直に11万円の値札を付けてしまうと、購入を躊躇する人が続出してしまいます。
そこで通信会社各社が考え出したのが、端末価格を月々の通信料金に含ませてしまい、総額でいくらの金額を端末に払っているのかを分かりにくくするという価格戦略でした。これが行き過ぎてしまい、日本の通信料金の価格体系は突出して不透明な状況になってしまったのです。
本来、通信回線と端末は別々のものですから、筆者は通信会社の不透明な価格表示を擁護するつもりは毛頭ありません。しかしながら、このような価格体系になってしまった背景には、日本の物価や賃金が安く、価格をストレートに表示すると販売数量が落ち込んでしまうという問題があるのです。