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生活費は5万円、子供の月謝も支払わない

 生活費を入れてほしいと頼むと、渡されたのは5万円だけ。家族が生活するには到底足りない金額だ。そのため、貯金を取り崩して生活するしかなかった。節約を心掛けてもどんどん減っていく預金残高に、先の見えない不安を感じていたという。

夫から、木村さんの母に送られたメッセージ ©文藝春秋

 自宅でも職場でも夫と一緒の木村さんは、居場所がなくなっていった。必要以上にミスを指摘するので、職場内で恥ずかしい思いを何度もした。事情を知らないスタッフからは、悪者扱いされたこともあったそうだ。誰にも相談できない、理解されない状況が長いこと続き、精神的に参っていった。

 それに加えてワンオペ育児の日々。夫は、子供の世話は全くしないという。木村さんが唯一覚えているのは、数回入浴の世話をしてくれたことだけ。それ以外の育児は全て、木村さんが行っている。

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「わが子のはずなのに、一切興味を示しません。生まれてから今まで一度も、旅行はもちろん、公園にすら連れて行ってもらったこともないですよ」

 夫は、子供の幼稚園の月謝も支払わない。引き落とし口座の残高はほぼゼロ。担任の先生との話し合いの末、毎月月謝袋を手渡しする方法となった。地域では伝統のある幼稚園として有名で、きちんとした家庭が多いという。月謝トラブルを起こしている家庭は我が家だけではないかと、恥ずかしそうに話してくれた。

 さらにモラハラの矛先は、木村さんの母にも向かった。娘夫婦の仲を取りなそうとした義母に向かい、「子供の喧嘩に親はでんときましょ、ってお前が家に来るからおかしくなったんやろ?」、「生活費を旦那が払ってる人は、決まりではなくその旦那さんがそうしたいからだけですよ」といった暴言を、ショートメールで送りつけたのだ。

「汚い子供やな」など攻撃的な言葉が ©文藝春秋

 経済的DV、そしてモラハラに神経をすり減らした木村さんは、心療内科で適応障害と診断される。不安定な気持ちからか、真夜中にラーメンを食べて10キロ以上太ったこともあれば、突然拒食症になり10キロほど痩せたりしたこともあったそうだ。

適応障害の診断がくだされた診断書 ©文藝春秋

とある自己啓発に多額の投資

 夫の行動の中で、とりわけ理解できないと話してくれたエピソードがある。それは、ある自己啓発セミナーに多額の投資をしていること。長年入れ込んでいる著名人がおり、書籍やCDの購入、50万円を超えるセミナー参加などに積極的だという。一時期、木村さんにもセミナーへの参加を勧め、断るのに苦労したそうだ。かなり熱心に取り組んでいるので、時には気持ち悪さを感じることもあったと語った。

 蓄積される不満から、木村さんは離婚を考え始める。しかし、話は進展しないどころか、より一層嫌がらせがエスカレートしていったのだ。