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連載この鉄道がすごい

リニア中央新幹線の乗り心地は「浮く」のか「沈む」のか?

都市に直結、地を這う航空機の「未来」

2020/11/29

新型車両と旧型車両の違い

 あれから5年が経った。2020年10月。リニア中央新幹線の報道関係者試乗会に参加した。今回は改良型試験車を使った初の報道試乗会だ。

 5年前に乗った試験車両は「L0(エルゼロ)系」という形式で、製造番号は900番台。9は国鉄やJRで試験車両に与えられる数字だ。営業運転を見据えて、客室設備も整えた車両として16両が作られた。実際の営業に使う12両編成の走行試験や、短い2編成に組み替えてのすれ違い走行の試験も実施した。

試験走行風景、手前が900番台、奥が950番台

 改良型も「L0系」だ。ただし製造番号は950番台とした。つまり、クルマに例えると「基本設計を維持したマイナーチェンジ版」という位置づけになっている。外観上の大きな違いはないけれど、よくみると、先頭車の形が違う。

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 900番台は前方へ向かって板を薄くしていく形だ。ヘッドライトと監視カメラは最先端にある。950番台は中央部を高く「鼻筋」を通した。最先端部もカマボコのような丸みがある。ヘッドライトと監視カメラは後退し、新幹線の運転席にあたる部分にある。950番台はN700系のセンスを取り入れたようにも見える。先頭形状の変化によって、空気抵抗を約13%低下させ、車外騒音も低減したという。

日立製作所下松工場で公開されたL0系950番台の先頭車(2020年3月撮影)

 内部の変化として、車内で使う電力の供給方式が変わった。リニア中央新幹線は地上設備と接触しないため、架線や軌道設備から電力を取り込めない。そこで900番台はガスタービン発電機を使っていた。最先端の磁気浮上列車が内燃機関を持ち、わずかながら排気ガスも出す。煙を出すリニア新幹線とは腑に落ちない方式だった。

排ガスのない、未来の列車

 これに対して950番台は「誘導集電方式」を採用した。簡単に言うとスマホや電動歯ブラシで採用された「非接触充電器」のような仕組みだ。軌道上に送電用のコイルを敷き、車両側に受電用のコイルを搭載する。送電用コイルに電気を流すと磁界が発生し、受電用コイルは磁力で電力を発生させる。排ガスのない、未来の列車らしい姿になった。

逆光側から見ると鼻筋の通った先頭形状が分かりやすい

 リニア中央新幹線は、浮上用の磁力、走行用の磁力、発電用の磁力が発生する。磁力だらけだけれども、客室は磁界から遮断される。乗車口は堅牢な金庫の入口みたいだ。身体や電子機器に影響はない。もっとも、磁気健康器具のような効果も期待できないが。沿線への磁気影響も基準値以下だという。