内装と座席はフルモデルチェンジ
900番台は16両作られた。これに対して950番台は2両、先頭車と中間車が1両ずつだ。試験走行にあたって、900番台の7両編成のうち、東京側の2両を950番台に交換した。先頭車が7号車、中間車が6号車だ。報道試乗会では新型車両1往復、旧型車両1往復の乗りくらべができた。
客室はかなり変わった。900番台の内装は従来の新幹線車両とほぼ同じ。950番台は7号車と6号車で天井、照明、荷棚などが異なる。7号車は天井に膜素材を使い、間接照明を採用して温かみのある空間をめざした。6号車は天井にガラス素材の吸音パネルを採用し、昼白色LEDの直接照明で明るさを演出した。走行区間にトンネルが多いため、明るさにこだわっているようだ。
座席は簡素で、新幹線車両というよりも、航空機の軽量型エコノミークラスのようだ。座面、背もたれとも薄く、構造全体でクッションの役目を兼ねる。車両の挙動を体感しやすいともいえる。これに対して950番台は背ずりにやや厚みがあり、頭部がバケット状になったため、高級感が出た。背もたれは900番台がスポンジだけ、950番台はバネを追加した多層構造になった。リクライニング機構も900番台の背ずりだけから、950番台は座面もスライドする。
背ずりを高くしてプライベート感UP
950番台は座席のサイズも大きくなった。幅が22mm、座席奥行きが40mm、背ずり高さが140mm拡大された。高い背ずりとバケット状の頭部デザインによって、プライベート感が増したと思う。私が気に入ったところは、2座席の間にある肘掛けだ。先頭車の先端と同様に中心線が盛り上がり、左右のどちらからも半分ずつ使える。これなら取り合いにならず、意地の張り合いも遠慮も要らない。今の新幹線などでもすぐに採用してほしい。
座席の下には大きな空間ができた。フレーム構造を見直し手荷物を置く場所を作ったという。航空機の機内持ち込みサイズに対応しているという。荷棚に荷物を載せる動作は身体への負荷が大きいから、これは良いアイデアだ。この空間を設けたため、7号車の荷棚空間は小さくなり、着席時の頭上空間が広くなっている。
背ずりを高くしてプライベート感を演出するアイデアは、小田急の地下鉄直通ロマンスカーMSEでも採用された。座席下の荷物スペースのこだわりは、小田急の最新型ロマンスカーGSEでも採用されている。過去をさかのぼれば、東海道新幹線0系電車の開発にあたり、小田急電鉄ロマンスカーSEを東海道本線で走らせる実験が行われた。偶然だろうけれど、そんな昔話を思い出した。
写真=杉山淳一
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