『稲川淳二の怪談グランプリ』で優勝経験もある、オカルトコレクターの田中俊行氏は、高校時代にある“奇妙な出来事”を経験したといいます。画塾での合宿中、田中氏が寝泊まりするアトリエに近づいてきたのは一体誰だったのか。その衝撃の実話とは――。
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これは数少ない、僕に起こった不思議な話である。
小さい頃から絵を習っていた僕には、ずっとお世話になっていた画塾の先生夫婦がいた。2人はともに画家で、関西を中心に教室を開いていた。
大きくなるにつれ、僕は画塾から足が遠のいたが、高校生のとき、美術大学を目指すためにもう一度先生夫婦の教室に通うことにした。当時、彼らは2人とも40代後半になっていた。
受験勉強ということもあって、連休中はもちろん高校が休みの日には、教室ではなく先生たちの家に直接向かい、隣接するアトリエで泊まり込み合宿をした。そんなとき、生徒はだいたい僕一人だった。
冬場はどこか寂しい一軒家だった
先生たちの自宅は大阪の北区にあり、京都と神戸を結ぶ国道沿いの、山の麓に立つ2階建ての一軒家だった(その隣にアトリエがある)。緑に囲まれているが、周りには民家もなく、ひっそりとしていた。夏はそれこそ気持ちいい場所だが、冬場はどこか寂しい印象だった。
合宿中は先生たちが朝昼晩とご飯を作ってくれ、お風呂にも入らせてくれる。僕が寝泊まりするアトリエには寝袋が用意され、あとは朝から晩までひたすら絵を描くのみだった。
そんな僕のことを定期的に先生たちが見に来てくれ(特に奥さんが見に来てくれた)、アドバイスをもらい、それを受けて描き直す……。そんな繰り返しだった。
それは、高校2年生も終わりの頃だ。立春が過ぎてもまだまだ寒い日が続く2月の上旬。高校の創立記念日が重なった3連休、僕はやはり先生夫婦の家にお世話になっていた。しかし、2人は自身の展覧会などもあってバタバタしていて、結局家を空けることになってしまった。