2017年10月に発覚した神奈川県座間市のアパートで男女9人が殺害された事件をめぐり、強盗、強制性交等殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)の裁判員裁判(矢野直邦裁判長)が東京地裁立川支部にて行われている。被害者遺族の意見陳述の模様をレポートする。
「体を抱きしめてあげることもできないまま3年間」
2人目に殺害された群馬県の高校生、Bさん(当時15)の両親の意見陳述は11月25日に行われた。両親に代わって女性の検察官が代読した。読み上げの途中、検察官は涙声になった。
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2017年11月9日。この日は、娘の誕生日で16歳になるはずでした。この日は身元が特定された日でもあり、かけた言葉が「おめでとう」ではなく、「お悔やみ申し上げます」と言われるようになりました。被告人の部屋から娘の荷物が発見されていたので、覚悟はしていました。
事件の翌年になってようやく娘が家に戻ってきました。体を抱きしめてあげることもできないまま3年間が経ちました。気持ちの整理はまだできません。どうして、15歳の娘が、こんな無残なかたちで殺されなければならなかったのか。
たしかに、自殺に関連した書き込みをしました。しかし、本気だったとは思えません。高校生のころなら、深く考えず、発信してしまうこともあるでしょう。少なくとも、事件当日、自殺願望は消えていました。事件当日は2学期の始業式です。その場しのぎで逃げたい気持ちがあっただけではないでしょうか。
娘の書き込みは、私も知っています。私たちに伝えたかったのではないか。気付いてほしくて書き込んだのではないでしょうか。もっと早く気付いていればと繰り返し思い出し、後悔しています。同時に、犯人に対して怒りが強くなってきました。
事件翌日、片瀬江ノ島の駅でスマホが発見されました。娘は(白石被告が江ノ島に捨てるよう指示した)スマホを捨てていなかったのです。帰るつもりだったからです。娘は一人で遠い距離の相武台前駅まで行きました。勇気が必要だったことでしょう。無事に帰ったら自信になり、成長していたはずです。被告人に対して約束をしてしまい、話を聞いてくれたので、帰れなかったのでしょう。黙って家を出た後ろめたさから帰りにくかったのかもしれません。
「やっぱり生きていこう」といった娘を犯人は言いくるめ、無残にも命を奪ったのです。許せません。娘には生きていてほしかった(※読み上げた検察官が涙声に)。
今は大学1年生の年代です。でも、私たちにとって娘は高校1年生のままです。成長する姿を見たくても、時間はあの日で止まったままです。自己中心的で理解ができない被告人には極刑を要求します。凄まじい怒りがわきあがります。娘は生きていこうという結論を出していました。娘の命を被告人の命では償えません。死刑だとしても、その時まで、苦しみ、絶命するまでもがいて欲しい。それが願いです。
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