2017年10月に発覚した神奈川県座間市のアパートで男女9人が殺害された事件の裁判員裁判(矢野直邦裁判長)で11月26日、強盗、強制性交等殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)に対して、検察側は「万死に値する」として死刑を求刑した。また、被害者参加代理人6人のうち、5人は死刑を求めた。白石被告は求刑のとき、目をつぶり、息が荒くなったように見えた。
「さらに殺人を続ければ、死刑になると理解した?」
検察官の論告は、次のような内容だった。
1)犯罪の性質、2)動機や計画性、3)犯行態様、4)結果の重大性、5)遺族の処罰感情、6)社会的影響、7)被告人の年齢、8)前科、9)犯行後の状況――といった、死刑の基準となる「永山基準」に照らして、「一連の犯行が自分の欲のためであると、潔く認めているものの、自分の罪の重さと向き合っているのか疑問である」「前代未聞の猟奇的かつ残虐で非人間的な犯行。9人の命を奪ったことは万死に値する」「被害者の承諾がなかったことに疑いはない」として、「死刑」を求めた。
求刑されたとき、白石被告は、目を瞑っていた。言い渡された後、メガネを直し、息づかいが荒くなったように見えた。ちなみに、求刑前日の被告人質問では、検察側とは死刑に関するやりとりがなされていた。
検察官 (2017年)8月30日夜、永山事件を検索していましたね? 何人殺せば死刑になるのかと。
白石 自分の行っている行為が死刑になるのかと思ったんです。
検察官 さらに殺人を続ければ、死刑になると理解した?
白石 はい。
検察官 死刑になることは怖くない?
白石 本気でつかまらないと思っていた。その都度、欲求が満たされていたので、死刑を考えなかった。
検察官 犯行を続けるのをやめようとは?
白石 「捕まらなければいいや」という状態を続けていた。
検察官 死刑は怖い?
白石 はい。
「あらためて死刑を望みます」
続いて、被害者参加制度のもとで遺族代理人6人が意見陳述をした。最初に殺害されたAさん(当時21、神奈川県)の母と兄の代理人はこう述べた。
「自らが殺されることの承諾はないことは明らかです。娘は懸命に生きてきました。Aは、掛け替えのない娘、妹です。あらためてA母、A兄は、死刑を望みます」