「殺されることの承諾はない」
9人目に殺害されたIさん(当時23、東京都)の兄も、代理人を通じて、「殺されることの承諾はない」などと訴えていた。ただし、Iさんの代理人だけは「死刑」や「極刑」という言葉を使わずに、陳述をしていた。
「妹は殺害の承諾をしていませんでした。弁護人の主張は、1)引きこもりがちだったために、兄以外の異性と会うのは苦手。にもかかわらず、白石に会いに行く。それは死ぬ目的だった、というものです。また、2)部屋に入って、お酒と薬を飲んだ。それは死の準備行為だとも言っています。本当にそうでしょうか?
家族や友人から『死にたい』と相談されたら、どうするでしょう? 死ぬのはダメという前提のもとに話を聞いていても、だんだん面倒になることがあります。兄はそうなっていました。Iさんは、『話を聞いてもらえない』と思っていたことでしょう。だから、『この人なら話を聞いてくれる』と思ったんではないでしょうか。会いに行くことは自然なことだったのです。Iさんはグループホームで、生活支援を受けながら暮らしていました。弁護人の主張はミスリーディングです。
嫌なこと、苦しいことがあれば、お酒を飲む。飲むことで気分が楽になることはあります。Iさんはまさにその状態でした。『安定剤だよ、気分が楽になるよ』と言われれば、飲むことだってあります。
酒や薬を飲むことは、殺されてもいいとの決断とは言えません。自分の気持ちを聞いてくれる、受け入れてもらえると思ったからでしょう。殺されてもいいという承諾ではない。それは弁護人の論理の飛躍です」
「極刑になったら、演技をする甲斐がない」
論告前日の最後の被告人質問で「『一部の被害者や遺族には何の考えもない』。(この答えは)本心ですか?」と検察官に質問された白石被告は「本心です」と述べた。また、裁判官に「ここは遺族も傍聴している裁判ですが、本心でなくても遺族の心境を配慮して言うこともできたはずですが、なぜ言わないのですか?」と問われ、「ここまでしてしまったら、演技してもダメです。結局、極刑になったら、演技をする甲斐がない。正直に言うしかない」と述べ、死刑を受け入れているというよりも、諦めているようにも見えた。
一方、最終弁論で弁護側は、責任能力について、「このような事件を平気で行った白石被告が、精神障害がないのは本当か?」などとして、精神鑑定について「違う医師が判断すれば、別の結果になるのではないか」と疑問を呈した。また、白石被告の供述は不合理で、信用性がないとして、「承諾がなかったとするのは疑問が残る」などと承諾殺人であることを訴えた。
判決は12月15日に下される。
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