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Q マヂカルラブリーのネタは漫才ですか?

 2017年は、断トツ最下位だったマヂカルラブリーのネタは漫才か否かという論争が起きました。最下位になったということは審査員には、優劣というより、漫才ではないと判断されたのでしょう。漫才ではないと言ったら言い過ぎかもしれませんが、僕も、あれは少なくとも漫才になっていないと思いました。

 マヂカルラブリーのネタは説明するのが難しいのですが、ボケの野田(クリスタル)君が「野田ミュージカル」と称し舞台で暴れまわるのを、ツッコミの村上君が冷静に解説したり、いさめるという内容でした。

 あれを漫才に近づけようとするなら、村上君はあそこまで解説しないほうがいい。野田君の独特な世界観を村上君が冷静にツッコみ過ぎて消してしまっているのです。「変な人でしょ?」と言って、引いているだけに見えてしまうんです。

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 ツッコミはボケに対して、絶対に引いてはいけないのです。お客さんも、それにつられてしまいますから。

 塩梅が難しいのですが、「ツッコむ」ことと「引く」ことは明確に違います。ツッコミは「アホやな」と言いつつも、出来の悪い子どもほどかわいがる親のように、ボケに寄り添ってあげないといけないんです。

©iStock.com

 ブラックマヨネーズの小杉さんの吉田さんに対する態度も、チュートリアルの福田(充徳)さんの徳井さんに対する態度も、呆れてはいますが、愛情に満ちています。そして、その愛の形は、相方に負けず劣らず滑稽です。

 ときどき内海桂子師匠と一緒に舞台に上がることがあります(編集部注:内海桂子氏は2020年8月22日に逝去。書籍刊行時は存命だった)。ちょっとボケているので……って、本当にボケてるんですよ。ボケが入っているので変なことばかり言うのですが、でも、それをいちいちツッコんでいたらお客さんも辛いと思うんです。だから、聞くだけ聞いて、最後、「いや、ババァ、さっきから何言ってんだよ!」と言うとどっとウケる。

 なぜウケるかというと、お客さんに僕の桂子師匠への愛情が伝わっているからです。どうでもいいことをじっと聞いてあげていたわけですから。

 強い言葉でツッコむときは、その前に二人の関係性を示す必要があります。でないと、お客さんが引いちゃうんです。いきなり「ババァ!」とツッコんだら、老人虐待になってしまいますからね。