「読売新聞を熟読して頂いて」
思い出していただきたい。2017年5月3日の憲法記念日。
読売は1面に『憲法改正20年施行目標 9条に自衛隊明記 首相インタビュー』と当時の安倍首相のインタビューを載せた。国会で問われた安倍首相は「読売新聞を熟読して頂いて」と言った。
このとき、読売のインタビュー掲載までの流れを朝日は翌日に書いている。
《今回の憲法改正の方針表明に向け、首相は事前にメディアにも対策を打った。4月24日夜、都内の料理店で、憲法改正試案を紙上で発表している読売新聞の渡辺恒雄・グループ本社主筆と食事。その2日後に東日本大震災をめぐる問題発言をした今村雅弘・前復興相を更迭した直後、同紙のインタビューを受けている。》(2017年5月4日)
出ましたナベツネ! 憲法記念日に改憲インタビューを載せるという仕掛けにはこんな流れがあったのだ。
渡辺恒雄氏の悲願でもある憲法改正。それを訴える安倍首相を読売は「推して」きた。しかし今回、安倍氏の求心力が下がるであろう記事を次々と載せ、その近くには菅&二階の企画モノの記事をちりばめる。
「乗り換えた」というのが下世話な表現だとすれば、渡辺恒雄氏の影響力が確実に下がっていそうなことが新聞マニアには「読める」のである。
ポスト菅を目指す岸田文雄氏にも影響が
たとえばこの記事も見てみよう。
『「桜」再燃 政権に痛手 安倍氏側 補填認める』(読売11月26日)
見出しは菅政権だが、読んでいくと安倍氏に関する解説のほうが面白いのだ。
《安倍氏は9月の退任後、表舞台での活動を徐々に再開させていたが、求心力の低下は必至だ。》
安倍氏の失墜はポスト菅を目指す岸田文雄氏にも影響が出ているらしい。
《岸田氏にとっては、来年の党総裁選を見据え、安倍氏との連携を強化する狙いがあった。岸田氏周辺からは「安倍氏を後ろ盾にする戦略は練り直す必要がある」との声も漏れ始めた。》
見出しでは菅政権に「痛手」とあるが、長い目で見ると菅首相には思わぬプラスになってしまいました、という状況でもあることがわかる。
各所で権力のうつりかわりを改めて実感。そんなことを感じた先週1週間の新聞読み比べでした。