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 2011年には46歳にして、父親である歌舞伎俳優・三代目市川猿之助(現・二代目猿翁)の芸を継ぐと決意し、自らは九代目市川中車、当時7歳だった息子は五代目市川團子を襲名して世間を驚かせた。

2011年9月には市川中車を襲名 ©文藝春秋

 幼くして両親が離婚し、母親(女優の浜木綿子)に引き取られて育った香川は、子供を儲けたのを機に、歌舞伎俳優の子として生まれた使命について考えるようになったという。襲名後に上梓した著書『市川中車 46歳の新参者』では、そこにいたるまでの葛藤、そして歌舞伎の世界に入る覚悟が克明に語られている。

俳優、歌舞伎役者に加えて昆虫マニアの一面も…

 俳優として活躍する一方で、Eテレの冠番組『香川照之の昆虫すごいぜ!』(2016年~)などを通じて、いまや大の昆虫マニアとしてもおなじみだ。

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 小さいころから昆虫を観察するのが好きで、昆虫の生態を見ているうちに1日が終わるほどだったとか。俳優になってからも、人前で表現することには興味がなく、むしろ表現している人をじっと隅から観察しているほうが性分に合っていると、著書に書いてはばからなかった(※5)。

 その後、俳優としても人間としても経験を積み、再び昆虫に向き合って、そこに何を見ているのか? 彼はこんなふうに語っている。

《大人になって、悲しい経験、楽しい経験、苦しい経験をたくさん経て、その上で昆虫観察という趣味に戻ったとき、今度は自分の人生を、昆虫を通してフィードバックできるようになって、あぁこれは、人生にとってこういう意味があったんだな、とかね。それは本当に素晴らしいことだと思いますよ》(※6)

 昆虫から人生の意味を教えられ、それがまた俳優の仕事にフィードバックされていくこともあるのだろうか。

©文藝春秋

 今後も出演作があいつぎ、この年末に放送されるスペシャルドラマ『当確師』(テレビ朝日系)では主演を務め、さらに来年10月からは、『半沢直樹』と同じくTBSの日曜劇場で放送予定の『日本沈没―希望のひと―』に、異端の地球物理学者・田所博士の役で出演が決まっている。

 後者はこれまでにも小林桂樹や豊川悦司などによって演じられてきた役だが、観察者気質を持つ彼がやればまた違ったものになることだろう。いまから見るのが楽しみだ。

※1 『週刊朝日』2019年2月8日号
※2 香川照之『市川中車 46歳の新参者』(講談社、2013年)
※3 『文藝春秋』2011年1月号
※4 『婦人公論』2012年9月22日号
※5 香川照之『日本魅録』(キネマ旬報社、2006年)
※6 『an・an』2018年7月18日号