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科学雑誌『ネイチャー』からの指摘

 また実験の際は、マネージャーのシピの同行が許可されていた。このシピとゲラーの間では、イスラエルの劇場時代からブロックサインなどを送るトリックが指摘されており、1978年には、もう一人のマネージャーだったヤシャ・カッツが、マネージャーを利用して行われていた具体的なトリックを明らかにしている。

 さらに、論文が掲載された『ネイチャー』でも実験について次のような指摘があった。

  • 実験のデザインと提示方法が弱く、その正確な方法についての詳細も困惑させるほど曖昧。
  • こうした領域を研究する研究者たちによって過去に学ばれた教訓を活かしていない。
  • 辞書をランダムに開いてターゲットを選ぶ方法は、浅はかで漠然としている。
  • このような弱点は、彼らの実験能力の欠如を示している。彼らの書いていないところで、他にミスを犯しているかもしれない。
  • 意識的、もしくは無意識のイカサマに対して導入された様々な予防策が、「不快に感じるほど甘い」。

 つまり、有名な『ネイチャー』に論文は載ったものの、実験は穴だらけで酷評されているというのが実情だった。

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【左】SRIの実験でターゲットとなった「ぶどうの絵」。
【右】ゲラーが透視によって描いたという「ぶどうの絵」。24個の房の数まで一致しているが、ターゲットの絵をシールド・ルームに隣接する部屋の壁に貼っていたことが判明しており、のぞき見が疑われている。

 ちなみに、2017年にCIAが公開した文書として話題になったのも、この『ネイチャー』で酷評された実験の報告書である。その内容は、1970年代当時の前出の論文や関係者の本などで書かれているものと同じで、新情報と呼べるものは何も含まれていない(CIAがゲラーを本物と認めていたという事実もない)。

 CIAは70年代に、旧ソ連が超能力研究を行っているとの情報から、超能力に関する話を肯定・否定を問わず、片っ端から集めていた。2017年に公開された文書というのは、そうした活動の中で当時集められた情報のうちのひとつだったと考えられる。

任天堂との裁判で超能力を示せなかった?

 続いては、ゲラーが起こした訴訟について。これは、主に1990年代と2000年代に行われたものがある。

 90年代の方で話題となったのは、アメリカの懐疑的調査団体「サイコップ」(現在はCSI)と、前出のジェイムズ・ランディを相手取って起こした裁判。

 この裁判でゲラーは、サイコップ側から中傷とプライバシーの侵害を受けたとして1500万ドル(約16億円)もの賠償金を求めた。

 しかし、裁判は1995年に和解が成立。ゲラー側が「軽薄な告訴」をしたとして、12万ドル(約1300万円)をサイコップ側に支払うよう裁判所から命じられて終決している。

 一方、2000年代に話題となったのは、ゲラーが任天堂(正確には日本の方ではなく、アメリカにあるニンテンドー・オブ・アメリカ)に対して起こした裁判。こちらは任天堂の商品「ポケットモンスター」のなかで、超能力を持つ「ユンゲラー」というキャラクターがゲラーとよく似ているとして、アメリカの任天堂を相手に総額1億ドル(約110億円)もの賠償金を求めた裁判である。