科学的に解明されていないものの、常識を超えた能力を持つ者として、1990年代に一躍脚光を浴びた人物がいる。手から聖灰を出現させ、手の上の銅の指輪を金の指輪に変え、ときに物質を遠隔地に瞬間移動させる…そう、“サイババ”だ。彼による数々の奇跡が本やテレビで紹介されるやいなや、日本中にサイババブームが起こった。しかしブームは過ぎ去るもの。彼の起こした“奇跡”は“奇術”であることが疑われ始め、次第にサイババ叩きへとつながっていく。果たして彼は本物の超能力者だったのだろうか。

 ここでは、超常現象の懐疑的な調査を目的に活動するASIOSによる著書『超能力事件クロニクル』(彩図社)を引用し、サイババの人生、サイババが与えた影響、そして彼の超能力について振り返る。

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アフロの聖人

 モジャモジャ頭のアフロヘアがトレードマークだったインドの聖者サティヤ・サイ・ババ。

 聖なる灰というビブーティをはじめとして、宝石や時計、指輪などいろいろな小物を空中から自在に取り出してみせる超能力で世界の注目を集めた。日本や欧米など先進国からも多数の信者を獲得、彼らからの多額の献金を元に慈善事業を展開し、学校や病院、空港などを地元に建設し社会福祉事業家としても活躍をした。

サティヤ・サイ・ババ(「Sathya Sai International Organization」より)

 サイ・ババは1926年11月23日、南インドのアンドラプラデシュ州の寒村プッタパルティに生まれた。14歳の時にサソリに刺されて数時間人事不省に陥ったが回復後、自分は著名なヨガ聖者シルディ・サイ・ババの生まれ変わりだと主張し出し、同時に空中から氷砂糖や花などを取り出してみせる超能力を発現したという。

インドの聖者「シルディ・サイ・ババ」。サイ・ババはその生まれ変わりを自称した (「Sathya Sai International Organization」より)

サイ・ババ・デパート

 サイ・ババは色々な超能力を見せたが、最も彼を有名にしたのは、日本でいうところの「物品引き寄せ」能力だった。ネックレスや時計、指輪といった小物を虚空から次々と取り出してみせ、信者へと配った。空中のどこかに「サイ・ババ・デパート」なるものがあり、彼はそこから物をとってきているのだ、などと言われた。

 サイ・ババが最もよく出してみせたのは、ビブーティと呼ばれる牛のフンを焼いたという聖灰だった。信者を前にして、サイ・ババが手の平を下に向けてクルクルと回すと、何も持っていなかったはずの彼の手の中には聖灰が出現。それを信者の手の上にこぼしてあげるというのが、彼が信者の前で日常行って見せていた「奇蹟」だった。