早死してしまったサイ・ババ
サイ・ババは生前、「自分は2020年まで生き、2023年に三度目の転生を果たす」と確約していた。次なるサイ・ババの名は、プレマ・サイ・ババ。その出現する場所には諸説あったが、インドのカルナータカ州のグナパルティ村とも、ドッダマルール村だとも言われていた。
だが実際は2020年を待つことなく2011年4月24日、サイ・ババは心不全で死去してしまった。サイ・ババは自らのことを、1918年に没したインドの聖者シルディ・サイ・ババの生まれ変わりだと名乗っていたことが、彼を聖人としてインドで正当化する大きな理由のひとつとなっていた。サイ・ババにとって、自らの輪廻転生は最重要課題のひとつのはずであったが、死期を10年近く読み間違え、早く亡くなってしまった。
サイ・ババの死期は西暦による計算ではなく、インド固有の太陰暦で換算したら96歳まで生きたことになるので正しく亡くなったのだ、といった反論もサイ・ババ信者から出されてはいる。だがそれなら誰もが混乱することは明らかなので、最初から「これは西暦ではない」とサイ・ババ自らが断っておくべきだったろう。
またサイ・ババは「死ぬまで健康を維持する」とも言っていたが、晩年のサイ・ババは、車椅子暮らしで健康状態はすこぶる悪かった。
バッシングと尊敬の間
サイ・ババは生前、信者に性的ハラスメントを行っていたとも指摘され、信者が離れかけたことがあった。また暴漢に襲われ、殺されかけたこともあった。
だが結局、インド南部の片田舎だった生まれ故郷プッタバルティに自らの巨大教団を構えることで、大学や無料の総合病院、長さ2200メートルの滑走路を備えた私有飛行場までを創り上げた。彼がこの世に残していった「遺産」は、4000億ルピー(約5800億円)とも、1兆5000億ルピー(約2兆2000億円)ともいわれている。
サイ・ババに対する科学的な実験は一度も行われることがなく、彼が本当に超能力者であったかどうかはかなり疑問が残る。だが、インドの社会福祉事業家としては、一流の人物であったことは間違いないと言えるだろう。
【参考文献】
E・ハラルドソン『サイ・ババの奇蹟』(技術出版、1990年)
デイル・バイヤーステイン『検証・サイババの「奇蹟」』(かもがわ出版、1996年)
『AERA』「インド聖者サイババの「奇跡」の報じ方で議論」(1994年8月15~22日号)
『ムー』(2011年7月号)
『ForteanTimes』(FT276 June, 2011)
ASIOS『謎解き超常現象Ⅲ』(彩図社、2012年)