疑惑のビブーティ出し
サイ・ババ信者の青山圭秀氏が、1993年5月に出した著作『理性のゆらぎ』の中でサイ・ババが紹介され、同書がベストセラーになったことをきっかけに日本でもサイ・ババブームが起きた。しかし同時に、サイ・ババが見せる「物品引き寄せ」能力が本物なのかどうか疑問の声も上がった。
そんななか1994年6月13日、日本テレビ系列で特番『スーパーテレビ・あなたは神を信じますか』がオンエアされた。かなりビリーバー寄りのサイ・ババを追ったドキュメンタリーだったが、サイ・ババがビブーティを取り出す瞬間を番組のカメラが捉えていた。
サイ・ババはビブーティを空中から出してみせる直前に、彼の近くに座っている信者が差し出した皿のなかへと右手を突っ込み、皿の上から不審な白い物体を指の間へと挟んで取り出すシーンが、はっきりと映っていた。
その後、サイ・ババは右手をくるくると回すいつもの仕草をして、手の平から白い粉を少量出現させ、信者に配ってみせた。その後に手のひらを広げてみせたが、握っていたはずの白い物体は消え失せていた。普通に考えれば、皿のなかから受け取った白い物体を手のなかで砕いて粉末状にし、それを出してみせた、としか解釈のしようのない仕草であった。
日本テレビ取材班は、撮影中にはサイ・ババのこの行為に全く気づかなかったという。だが、番組の編集作業中にスタッフが「疑惑の行動」に気がついた。スタッフから「あれ、何か取りましたよ」と指摘され、番組の田代裕ディレクターは「さすがに困惑した」と後に語っている。しかし、あえて手を加えることをせず、そのまま放映したのだという。
重なる疑惑
ビブーティに関しては、サイ・ババの写真の表面からビブーティが溢れ出てくる、という奇跡も宣伝された。テレビ朝日系列の『興味しんしん丸』という番組が、サイ・ババの写真の前に固定カメラを設置して長時間追うことで、写真からビブーティが溢れ出す瞬間を捉えることに成功した。だが同番組では、採取したビブーティを化学分析にも掛けてみた。その結果、判明したのは聖灰の正体は牛のフンなどではなく「消石灰」と「ドロマイト」という化学物質だということであった。
消石灰は、体育祭などで校庭に白線を引く際に使っていた、あの白い粉のことだ。消石灰は、酸化カルシウムに水が反応するとできる。つまり、写真の表面に少量の酸化カルシウムがもし付着していたら、空気中の水分と反応して消石灰となって体積は約1・3倍へと膨らむ。そのため、写真の上にそれまで見えなかった白い粉末が出現して来ても、何も不思議はないという結論となった。